13 December 2018

元テンプルズ(Temples)サム・トムズ(Sam Toms)インタビュー | 脱退の真相とは?


バンド公式から何の発表もないまま、テンプルズ(Temples)のドラマー・サミュエル・トムズ(Samuel Toms)が突然消えた。現在テンプルズのドラムはサポートメンバーであるオランダ人レンズ・オットインク(Rens Ottink)が務めている。誰もが知りたかったサム脱退の真相がついに本人の口から語られた!…というわけで、檀家(テンプルズのコアファン)注目の本記事を和訳してみることにする。

【元ネタ英語記事】[Interview] With ... Samuel Toms(IT'S ALL INDIE 2018年12月6日)

以下、当サイトによる翻訳



インディーロックのベストドラマーというキャリアは、憧れと羨望の的であり続けているが、テンプルズ (おそらく世界的に最も高く評価され愛されている現代のサイケデリックロックバンド)から脱退する際、サミュエル・トムズが確かな希望を抱き、エネルギーとクリエイティビティーに溢れていたことは間違いない。才能あるドラマーでありソングライターでもある彼は、ケタリング出身の4ピースバンドからの脱退以来、いくつかの音楽プロジェクトを同時進行させるのに超多忙な日々を送っている。

最初にサミュエルがやったことの1つは、ドラマーとしてエクスペリメンタル・ポストロックバンドファット・ホワイト・ファミリー(Fat White Family)への加入の誘いを受けたことだった。元々ファンでありバンドの友人でもあった為、そこに迷いはなかった。またサミュエルには、かねてからソロ・アーティストでありたいとの考えもあった。1人で音楽をやるのは真新しい夢などではなく、何年もの間思い続けてきたことだった。決意というよりは自然な成り行きで次のステップに進んだ…ということのようであるし、まだテンプルズに所属している頃からずっと作詞作曲も行っていた。

サミュエルはリズムギターを弾き、そして歌う。曲を書き、素晴らしいミュージシャンとプレイし、奇抜でエッジの効いたエンターテイメント的ライブをする…というのが彼のやりたかったことだ。6年いたバンドを抜けるのには、明らかにアドバンテージがあったし、脱退によってさらに大きな解放感とインスピレーションも得られた。いきなりオファーを選べる立場になったのは、彼に好奇心と情熱があったからである。またサミュエルはシークレット・フィックス(Secret Fix)のフロントマンでもあり、トーイ(TOY)やザ・プロパー・オーナメンツ(The Proper Ornaments)のメンバーであるマックス・オスカーノールド(Max Oscarnold)とコラボし、ザ・テレスコープス(The Telescopes)ではギターもプレイする。

あれだけの長い期間テンプルズの正式メンバーを務めたのが特別な経験であるのは言うまでもない。そんなバンドを脱退し、次に進んで新プロジェクトに身を投じ、別のミュージシャンと共にやっていくには、相当な努力や献身、頑張りとエネルギーが必要になる。だがサミュエル・トムズはそれらの全てを注ぎ続けている。そんな1人のミュージシャンの新しいキャリア、過去と未来の思考や考えをもっと聞きたいとの好奇心から、この非凡なミュージシャンと貴重な独占インタビューを行い、皆さんにお届けできるのは我々IT'S ALL INDIEにとって誇りを超えて余りあるものがある。


すっごく色々変化したわけだけど、自分の現在の状況についてどう感じてる?

とてもラッキーだったと思ってる。なるべくしてこうなったって感じで素晴らしいし、これがずっと続くことを願ってる。

ファット・ホワイト・ファミリーのメンバーになるなんて想像したことはあった?

ファット・ホワイト・ファミリーのライブには何度か行ったことがあった。以前テンプルズで何度か同じフェスに出てたから。それから別の友達を通じてパーティーで出会って頼まれた。最初はSecure Men(訳者注:FWFメンバーであるソウル・アダムチェイスキー(Saul Adamczewski)率いるインセキュア・メン(Insecure Men)のこと)でプレイするはずだったんだけど、まだテンプルズにいた頃で忙し過ぎたから結局誰か他の人が入ったんだけど。でもすべてがうまく運んで、テンプルズを抜けた時、ファット・ホワイト・ファミリーが「メンバーになりたい?」って聞いてきたから「もちろん!」って感じだった。

ソロに転向するのってどんな感じ?今のところは楽しい?

ソロに関しては、僕的にはずっとやり続けてきたことだと思っていて、まだテンプルズにいる頃から曲は書いてたけど、脱退してからさらに多くのインスピレーションが得られるようになったのは確か。何曲かレコーディングする予定だからどうなるか見てて。自分だけのことだから、今自分がしてることをどうにでも出来ちゃうわけで、全くもってすべて自分次第。アルバム1枚作ってそこからスタートしたいと思ってる。誰かリリースしたいって人がいてくれればクールだけど、誰もいなきゃ自分でプレスしてDIYで発売するさ。

自分のサウンドや歌詞をどう説明する?

ある意味、大人のテーマを持った子供の曲みたいな感じ。サイケデリックロック全般にはうんざりしてて、僕がお決まりのサイケデリックものについてじゃあ話しましょうって言ってる間にも、パンダ・ベア(Panda Bear)みたいなアーティストはどんどん前進してるわけでさ、ギターバンドにリバーブかけまくらせてるだけじゃなくて。

ポップなメロディーに本当にくだらない歌詞っていうのにマジで興味がある。自分の曲は雰囲気モンじゃなくてかなりドライにしたかったんだ。風刺とか社会的メッセージにも興味はあるけど、あんまり真面目にはしたくなかったんだよね。ふざけてスタートしたものなら誰も後から馬鹿にしたり出来ないしね、自分だって似たようなことやってきたわけだから。シンプルな曲が書きたかったっていうのはあるね。まだ直しを入れるかもしれない曲もあって、もっとモダンなサウンドにするかも。ダブとか何かのミックスとか、まぁどうなるか見ててよ。

どんな主題や状況からインスピレーションを得ているの?

ヒドいこととか、いろんなものにイラっとしてるんだ。多分皆んなの多くがイラっとしてるものにね。でもアートに政治を持ち込むって考えはキライだから、僕の曲は生活とか人間、アティチュードについてだね。「ウォーク・ハード:ロックへの階段(The Dewey Cox Story)」って映画観たことある?「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道(Walk The Line)」のパロディーみたいなやつ。映画の途中で何かが起こって「ちょっと待った!それって曲になるかも」みたいなのがあって、そういうのが僕の頭にセンサーを送ってこようとする。何かイラっとくる時とか、何かが目に付く時とかいつでも。この映画が他の人にとって面白いかどうかは分からないけど、気晴らしにはなると思うよ。

音的にどんな影響を受けているのかは単純な話ではないし、それが何であるか見極めるのも容易ではない。だがサミュエルのライブを観たことがある者は皆、その表現のユニークさには同意する。オリジナリティーと個性があるのだ。スクイーズ(Squeeze)、シド・バレット(Syd Barrett)、テレヴィジョン・パーソナリティーズ(Television Personalities)、アイバー・カトラー(Ivor Cutler)と自分を重ねる人もいるとサミュエルは語る。

テンプルズのスタイルは曖昧でとても詩的だったけど、僕の作品は完全にストレート。


Photo Credit: Martin Shaw



テンプルズと同じぐらい最高のミュージシャンでバンドを固めなきゃっていう考えはある?

ラッキーなことに仲がいい友達は皆んな素晴らしいミュージシャンなんだ。モノを分解するみたいなことは大好物でマックス(・オスカーノールド)とはそれをやってるよね。例えばマックスがチープなYAMAHAのキーボードを弾いて、僕がギターとかでもいいかも。今夜のセットはちょっとプロトパンク寄りでもっとエレクトリックにする予定。バンドで3曲演って、それから僕だけで1曲演ることになると思う。ポップソングか酒飲みの曲。大体いつも楽しいよ。

サミュエルの曲のタイトルには「Booze and Hippies For Hate(憎むべき酔っ払いとヒッピー)」というのがあり、そのうちリリースされるデビューアルバムに収録するつもりらしい。「The Professional(ザ・プロフェッショナル)」という知人についての曲もある。

曲のタイトルには何となく自虐的な「Useless Pr*ck(役立たずのペニス)」とかもあるけど、僕に同情してもらうための曲じゃないよ。「Jimmy Riddle's Milk(ジミー・リドルの牛乳)」とか「Special Disease(特殊な病気)」って曲もある。僕にとって曲のタイトルはとても重要でアートワークと同じくらい力を入れてる。タイトルを書いてる時はあらゆることを考慮するようにしてる。

リリースはどうするつもり?誰かアプローチしてきた人はいる?

今のところまだ誰も。たぶんまずは何かを仕上げなきゃならなくて、シングル曲作ってビデオを公開して、そしたら何か具体的なものを示せるよね。シングル曲って、今僕がやってるのはコレですって皆んなに知らせるためのものだからね。とある有名でビッグなバンドをマネジメントしてる男性とずっと話してるんだけど、僕をヘルプするのに興味を持ってくれるかも。

テンプルズのことに話題を移すけど、脱退についての情報発信がほとんどないようだけど、それについてはどう考えてる?

テンプルズの誰も何も言ってないよ。ファンからのメッセージで「どうなってんの?」「なぜ一緒にプレイしないの?」みたいなのが来てるから、(脱退を)認めるとか、ありがとうとか何でも、テンプルズがちょこっと投稿してもいいんじゃないかとは思うけど。

脱退する時点での雰囲気はどうだった?

メンバーにとって僕はちょっと頭の痛い存在ではあったけど、要は僕らって家族みたいなものなんだよね。全員同じ小さな町で育ってるんだけど、家族とだって一生一緒に住んだりしないよね。どっかの時点で家を出て新しい悪友が出来るわけで、僕がやったのはそういうこと。

脱退のきっかけは?

メンバーに出ていくように言われたんだ。詳しくは今言わないけどそんなひどいものではなかったよ。僕らのどっちもそろそろ別々の道を行く時期だって感じてはいたんだけど、たぶん僕自身に今イチそれを認めてないところがあったかも。(脱退については)その人が考えるようにその人なりのストーリーを作り上げてくれればそれでいいし、それがどういうものか知りたいよね。

でも脱退についてはだいぶ前から考えてはいたんだけど、ツアーに出て世界中廻って稼いでたし、途中で止めるわけにもいかないから難しかったんだ。誰でも自分っていう存在が何なのか自問自答する時期ってあるけど、多分僕はもうちょっと早く脱退するべきだったんだろうなって思う。自分自身と他の人達にもフェアでいるためにね。

彼らとこの先長くは一緒にやらないだろうなって悟ったのはどの時点で?

多分、バンドに加入してそんな経ってない頃。僕っていつも物事にきちんと関わるのを楽しむタイプの人間なんだけど、テンプルズに関してはすっごい他人事だった。ある意味、それってクールなことではあるんだけど。ドラムだけ叩いてその他諸々については心配しなくていいっていうのは良かったんだけど、その一方で誰か他の人が舵取りする船に乗ってるっていうのは好きじゃないんだ。それってちょっと怖いことだし。あんまり嬉しくない決定がされちゃうとかそういう類のことだね。だけど本当に素晴らしい時間を過ごせたし、それが6年続いた。世界中ツアーしたし、素晴らしい人達とも出会ったし、すっごい楽しんだよね。

テンプルズの長期間の世界ツアーの中でどのライブが印象に残ってる?

日本のフェスでのライブには、本当にスペシャルなものもあった。単独で演った日本のライブの多くも素晴らしかった。マンチェスターはいつでも間違いなく凄かったね。キッズ達がいつもバカ騒ぎで、テンプルズの曲でモッシュするのが好きなんだ。メンバー全員ガチで具合悪かったライブもあったな。イピサ島でプレイしたんだけどあれは変な経験だった、僕らに合わなかったってだけだけど。

翌日ベニカシズム(訳者注:スペインのフェス)で演ることになってたんだけど、ちょうど僕らが大きくなりかけで人気が出始めたぐらいの頃で、僕らを観に来る人なんているのか全く分からなかった。(最初行ったら)誰もいなくて僕らは全員バックステージに下がってたんだけど、(本番で)ステージに歩いていったら何千という観客が僕らを観に来てた。ちょうど日没の時であれは最高のライブだったなぁ。まだ具合悪かったけどアドレナリンに助けられて何とかやり切った。あれはとってもマジカルだったなぁ。

最も思い出深い瞬間や経験ってどんなのがある?

間違いなくあの頃出会った人達だろうね。今じゃほぼどの大陸に行っても一緒に過ごす友達がいるし。だけど単なる友達なんかじゃなくて素晴らしいキャラクターの持ち主でもある。この世に存在するとさえ想いもしなかった人達なのに、そういう人達の人生がまるで映画みたいだったりするんだ。今まで自分が出会った人達に思いを巡らすのはとても楽しいし、皆んな本当にいい人達なんだ。

カンザス・シティに素晴らしい友人がいて、ただ彼の家に行くってだけでスペシャルなんだ。皆んなあんな場所に行ったことないと思うよ。高価とかではないんだけどベランダがあって、家の前に座って行きかう人達に挨拶して、マジでロマンチックで素晴らしいんだ。

クリントンって奴なんだけど、彼と友達になって、次回テンプルズでライブしにカンザス・シティに来たら「君たち全員迎えに行くから。30分で着くよ」とか言われてたんだ。で、その後僕に電話を掛けてきて、外を見ろって言うから見てみたら、ピンクのキャデラックに乗っててさ。めちゃ明るいピンク。それからその車で遠出したんだけど、どこに連れて行くのか言ってくれなくて。結局どこだかよく分からない場所にある年配の女性が経営してる古いヴィンテージショップだった。

その女性は1970年代からこの店をやってるんだけど、僕らにスーツをくれたから2人でちょっとフレッド・アステア(Fred Astaire)みたいになって店を出た。シルクハットも被ってね。クリントンとピンクのキャデラックで街中をドライブして最高の日を過ごしたな~。ま、そういう感じのことだよね。そういうのがツアーを特別なものにして、勿論いいライブも出来ちゃうわけで、その2つのために僕は生きてるよね。

自分にはあまり特別には聞こえなかったけど…。そのような出来事はあなたのアイディアやクリエイティビティにどの程度影響するんでしょう?

ある時ドキュメンタリー制作のアイディアが浮かんだんだけど、いつかそれを形にしたいと思ってる。「Ambassadors(アンバサダー達)」っていうんだ。ツアーに出た時に出会う人達は皆んなアンバサダー(大使)みたいだから。とある街に行って、その人がその街にいて街中案内してくれて楽しませてくれる。僕のアイディアは誰かと一緒にいることについてで、そういう人達のリストを作って、リストの中の人のところに行って一緒に1週間過ごして生活の様子を撮影するんだ。アンバサダー全員が僕のところに会いに来て、僕の家で盛大なパーティーをするなんてのもいいかも。世界中から、最高の人達全員。

クールなアイディアだと思うよ。たくさん追跡取材できるしアンバサダーになるバンドをピックアップしたりとかさ。例えばだけど、ファット・ホワイト・ファミリーをフィーチャーしてアンバサダーとして撮影したら、彼らのクレイジーな友達のこと全員見せられるよね。そういう友達の皆んなにもギャラをもらう価値があるし、彼らの周りにいると凄くインスパイアされるんだ。だからバンドの華やかな面だけにフォーカスするんじゃなくて、表面を掘り下げてバンドのルーツを見せる。

ファット・ホワイト・ファミリーに関する最新情報は何かある?彼らとのこれからのプランについて話してもらえますか?

今レコードを1枚仕上げてるところ。めちゃカッコいいサウンドだよ、すばらしいんだ。彼らは常に本当に素晴らしいものを作ってるし、レコーディングによってかなりサウンドが違ってくる。あんまり詳しくは話せないけど。喋り過ぎると殺されるかもしれないからさ。でも来年僕らは新しいマテリアルをリリースする予定で、それからはツアーの毎日だね。だから自分のソロの作品を早くやっちゃわないとね。


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