18 October 2018

プライマルスクリームのSimone Marie Butlerインタビュー | Evening Standard

Photo Credit: Eva K.Salvi


Soho Radioの自身の番組「Naked Lunch」でゲストがあまりよろしくない日本に関するジョークを言えば即座にフォローしてくれる僕らの姉貴ことPrimal Scream(プライマル・スクリーム)のSimone Marie Butler(シモーヌ・マリー・バトラー)。数年前のインタビューで「フィアンセ」という言葉を連発しており、最近愛犬絡みの投稿も多いことからもしかして…等思いつつ、UKのEvening Standardのショート・インタビューを翻訳してみた。

【元ネタ英語記事】Primal Scream's Simone Marie Butler interview: 'Mick Jagger is a very fit man' (2018年10月5日)

以下、当サイトによる翻訳



シモーヌ・マリー・バトラーは2012年以来、プライマル・スクリームをパワーアップさせてきた。前任のマニ(ザ・ストーン・ローゼズ加入の為、脱退)とベーシストを交代した年である。彼女はバンドメイトのボビー・ギレスピーやアンドリュー・イネスと共に世界ツアーを行い、Soho Radioに自身の番組を持つ。

「もし自宅が地面に飲み込まれるようなことがあれば、中に飛び込んでベースギターとパスポートを取ってくるでしょうね」。バトラーは言う。「そうすれば少なくともツアーには行けますから」。結局ベースがすべてなのである。


これまでステージから見た一番奇妙な光景は?

前、フェスで誰かが車輪付きのゴミ箱をステージ前でクラウドサーフさせてたことがありました。会場にはラブドールとかあらゆる物が飛び交ってますが、あれはかなり印象的でした。ああいうのってすっごく重いんですよね。


最も「夢じゃないか」と思った瞬間は?

グラストンベリーでローリング・ストーンズをサポートしたことは、自慢に聞こえないよう普通に話すのが難しいですね。でもあれが自分にとって人生のクライマックスなのは間違いありません。


完璧なロックスターを作り上げるのに必要なものは?

ミック・ジャガーのハムストリング筋。彼はとても壮健な男性ですよね。デヴィッド・ボウイの衣装。あとプリンスのヴィジョン。ダイヤモンズ・アンド・パールズ・ツアーの時、アールズ・コートの最前列にいた14才の自分を今でも覚えています。あの時もうプリンスは皆の憧れの存在だったけど、彼の功績はこの先ずっと生き続けるでしょうね。


ロンドンについて学んだことって何かありますか?

ピムリコ(Pimlico)は昔にタイムスリップした街だってこと。あそこはまだ1500のガス灯が現役で、係の人がハシゴ片手に全部廻って、朝晩毎日点灯・消灯してるんです。


何かジョークを言って下さい…。

少年が学校でベースのレッスンを始めました。最初のレッスンから帰宅した時、お父さんが言いました:「今日は何を習ったんだい?」。少年は言いました:「最初の2弦、EとA」。

次の日、帰宅した少年はお父さんに言いました:「パパ、今日は次の2弦を習ったよ。DとG」。3日め、少年は言いました:「今日はレッスンに行かなかった。ライブがあったから」。


※訳者注:ベースは4弦あり、4弦=E(ミ)、3弦=A(ラ)、2弦=D(レ)、
1弦=G(ソ)が開放弦(指で弦を押さえないこと)で弾ける。



シモーヌ・マリー・バトラーはFender社のアプリ(fender.com/play)のアンバサダーを務めている。



◆あわせて読みたい当サイトSimone Marie Butlerインタビュー:


16 October 2018

幾何学模様(Kikagaku Moyo)| The Aquarium Drunkard Interview

KEXPライブ収録日(2018年8月1日)の幾何学模様(Kikagaku Moyo)
photo by KEXP flickr

2018年8月のUS西海岸ミニツアー時、ついにKEXPライブ出演を果たし、現在それとはまた別の(!) 全米ツアー中の幾何学模様(Kikagaku Moyo)。バンドのスポークスパーソンであるゴウ・クロサワ氏(ドラムス&ヴォーカル:写真左から2人目)が4枚目のフルアルバム「Masana Temples」(2018年10月5日発売)について答えているインタビューを翻訳しました。インタビュー元は毎度お馴染みロサンゼルスのメディアAquarium Drunkard。

【元ネタ英語記事】Kikagaku Moyo / 幾何学模様 :: The Aquarium Drunkard Interview(2018年9月25日)

以下、当サイトによる和訳(前文は省略)




皆さんは「Masana Temples」のレコーディングでジャズミュージシャンのブルーノ・ペルナーダス(Bruno Pernadas)氏をプロデューサーに迎える為、ポルトガルのリスボンまで赴かれました。彼と繋がり一緒にやってみてどうでしたか?

去年のいつだったか彼のソロアルバムを見つけて、ツアー中よくかけていました。僕らはニューアルバムのレコーディングを計画中で、僕らにはない違う視点を持ったプロデューサーを探しているところでした。ある日、彼にメールして僕らのレコードのプロデュースに興味があるか聞いてみたんです。彼は僕らのことを知らなかったんですが、それは良いサインだと僕は思いました。彼自身のレコードは全てセルフプロデュースしているのですが、他のアーティストの作品をプロデュースしたことはないということで、そういうのもやりがいがあって僕らにとっては刺激的でした。結果にはとても満足していて、一緒にやらせてもらって彼のアイディアを取り入れられたことをとても誇りに思っています。


前回のアルバムの時とは違って、今メンバーは東京で一緒ではなく、それぞれ違う場所、違った国にさえ住んでますよね(訳者注:ゴウ・クロサワ氏とトモ・カツラダ氏(ギター&ヴォーカル)はアムステルダム在住)。今回のアルバムと以前のアルバムを比較してみて、そのことは作曲やレコーディングをどう変化させたのでしょう?

東京で共同生活をしていた頃は、一緒に集まって出かけていろんなことを話して年中ジャムセッションしていました。今、僕らは離れて住んでるかもしれませんが、ツアーになると4~5ヶ月間毎日24時間一緒で、また同じようなことをしています。ブラブラして音楽を演ってビデオゲームをする。僕が思うに、大きな変化のひとつは皆んなもっと個人の時間を持てるようになって違ったインスピレーションを得られるようになったことじゃないでしょうか。結構よくスカイプで話していて、何聴いてるとかどんな曲作ってるとか情報共有しています。僕らには専用のDropbox(訳者注:ドロップボックス。オンラインストレージサービスのこと)があって毎週アイディアを全部そこに落とし込むようにしています。アイディアの貯蔵庫ですね。メンバーの誰かが曲作りをしたくなったら、そこからアイディアを取り出して自分のアイディアと合体させる。最近はあまり一緒に練習する時間が取れないので、曲が60~70パーセント程度出来上がった時点でライブで生で演ってみて、曲が出来たってなる前に、メンバーや観客がどう感じるかチェックするようにしています。


2014年のインタビューで、スタジオでは通常1曲につき2テイク以上やることはなく、ミスも全て包み隠さずありのままのバンドの姿として発表するとおっしゃっていました。この点については今もまだそうなんですか?ペルナーダス氏はそのレコーディング方法に何か反対したりしませんでしたか?それとも皆さんのいつものやり方に賛成でしたか?

実際、今でもこのニューアルバムで同じやり方をしてますし、ブルーノも同じ考えでしたね。最初のテイクを終えたら、彼がミキシングブースから「皆んな凄く良かった!」って叫んでるから、僕らはいくつかミスしたって分かっててもお互い顔を見合わせて「じゃ、良かったってことで!」ってなってましたね。


先程と同じインタビューで、あなた方は幾何学模様の音楽を「芸術(アート)」だとは考えておらず、何かもっと原始的で衝動的なもの、何か身体と魂の両方に悦びをもたらすものと考えているとおっしゃっていました。先程のスタジオでのわずかなテイクのお話と併せて、レコードの幾何学模様と生で演るライブパフォーマンスとの比較についてどう思われますか?あなた方の楽曲はライブでやることで、どのように進化し続けているのでしょうか?

ライブのセットでは未だに初期の頃の曲も演っていますが、どの曲も違った風に進化してますね。メンバーが、ジャムのパートでさえ、曲をキッチリ演ろうとしてるなと感じる時はいつも全くリズムを変えてしまって、皆んながどうリアクションするか見ています。ライブでプレイする醍醐味はこれに尽きますね、いつもと全く違う何かをやるチャンス。レコードと同じに演りたい曲もありますが、変化させたい曲もあります。僕が思うに、ライブ直後にどの曲を演ったか覚えてないのが良いサインです。あまりセットリストのことに囚われず旅に出てるみたいなライブだったからそうなるわけで、旅のステイ先がそれぞれセットリストの曲になるわけです。僕らはいつも違うルートを辿っていくのでステイ先それぞれというよりは旅全体について心地良くなるんです。





アメリカの作曲家ジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa)が1906年に執筆したエッセイで、ビクトローラ(訳者注:Victrola。卓上蓄音機の商標名)とレコード音楽プレイヤーの隆盛について嘆いています。人が音楽から引き離されるのではと考えていたようです。人が楽器の演奏方法を学ばなくなるとか、音楽的な衝動が奪われてしまうとさえ考えていたようです。「音楽の歩みとは、その最初の日から今日まで、我々の魂が今どうあるかを音楽に表現させることだけにある」と書かれているのですが、この考えに何か共感するものはありますか?あなた方がレコーディング中できるだけ即興性に訴えるようにしていることと何か類似性はあるのでしょうか?

言いたいことは分かるし共感する部分もあります。ジミ・ヘンドリックスのパフォーマンスを生で見たことがある人は、レコードで聴いただけの人とは違う体験をしてるって思いますし。でも音楽的な衝動が奪われるかどうかは分かりませんね~。それはリスナー次第じゃないでしょうか。僕らにとってはライブでの自分達なのか、レコーディングでの自分達なのかが大事です。自分達の好きなことをして自分達のままでいて自分達自身に忠実であることがとても大切です。例えミスしても、それが僕らなんだし。


いつもと全く違う場所、ポルトガルのリスボンにいるということは、レコーディングにどんな影響があったのでしょうか?この前のEPはプラハ録音でしたから、今回が特に変わった経験だということにはならないのかもしれませんが。

3月にUSツアーをやって直接リスボンに飛んだので、実際変な気分ではありましたね。アメリカはめちゃくちゃ寒くてメンバー全員具合悪くなってたんですが、リスボンに着いたらあんなに気持ち良い暖かな気候で晴れまくってて、海沿いを散歩したりしてましたし、レコーディングスタジオは木々に囲まれていました。あの太陽が降り注ぐ真夏のヴァイブスは確実にこのレコードに影響してますね。


ニューアルバムのタイトルについて少しお話頂きたいのですが、「Masana」はユートピア(理想郷)的社会のコンセプトで、このアルバムのために創作された言葉なのでしょうか?アルバムの各曲が「Temple(寺)」であって、その何かを定義付けしているのでしょうか?それともアルバムのタイトルには何か別の意味がありますか?

それについては皆さんに想像して頂きたいので回答不可です!



幾何学模様(Kikagaku Moyo) - Masana Temples (2018) (Full Album)



あなた方はまもなく中国ツアーを終え、今後アメリカからカナダまで、もっと長期のツアー(訳者注:9月28日~10月28日)に出て、その後ヨーロッパ中を回り(11月7日~12月3日)ツアーを終えるスケジュールになっています。観客や周辺の様子等何でもいいのですが、特にプレイするのが楽しい土地ってありますか?

アジアでツアーをするのはこれが初めてで、この前はインドネシアにいたのですが今は中国にいます。欧米と比べると、アジアの国々には音楽や音楽業界に全く異なる歴史や背景がありますね。ちょうどインドネシアのバリのフェスでプレイしてきたところなのですが、ステージが巨大な石で囲まれていて、その石を見下ろすデッカイ彫像があって、まさにStone Garden(訳者注:最新EPのタイトル) x Masana Templesって感じでした。


自国でやるよりヨーロッパやアメリカからの反応の方が良いというのは未だに感じますか?そのことについて何か変だと感じたり、悩んだりすることはありますか?

そうですね、日本よりヨーロッパやアメリカのオーディエンスの方が数が多いですが、そのことで悩んだりはしませんね。日本のバンドっていうだけで日本のオーディエンスの方が多いってことにはなりませんから。僕らは世界をもっとフラットに見ていて、僕らの音楽を聴きたい人が多くいる場所に行ってプレイするだけです。


前回の我々のインタビューで、ほとんどのバンドが直面する日本の「Pay-to-Play(ライブしたけりゃ金払え)」制度についてお話頂きました。この制度のせいでマイナーなバンドがただライブをするのにさえ法外な金がかかるとのことでした。あなたのレーベルや、発掘した(ノルマ制のない)バーで毎月開催するサイケデリックナイトを通して、まだこれからのバンドを集めセッティングされてきたわけですが、そのようなカルチャーに風穴を開け、バンドが演奏できる環境を開拓できていると思いますか?

この問題についてはインタビューの依頼を受け始めた頃からずっと言い続けています。でも僕らのインタビューはほぼすべて海外のメディアだから、ホントにこの状況に影響を与えられてるかは分からないですね~。「ノルマ」として知られる「Pay-to-Play(ペイ・ツー・プレイ)」のシステムは東京でまだ広く存在していますが、人が来なくなってクローズしかけてるハコもあるので、このシステムを見直し始める所も出てきています。良い兆しだと思うし、他の誰かが疑いもせずやってることにただ従うのではなく、もっとDIY的な別の解決策を皆んな探し始めるようになるでしょうね。



幾何学模様(Kikagaku Moyo)- Nazo Nazo



ニューアルバムから「Nazo Nazo」の素晴らしいビデオが完成しました。この手のビデオに対する反応は「よく分からない」っていうのが多いんですが、イメージというのは音楽と同じで、感情を掻き立てるものであって、もっと具体的な意味について説明するためのものではないと思うんです。本作はロンドンを拠点にミュージックビデオを多数制作している映像作家エリオット・アーント(Elliot Arndt)氏が監督していますね。このビデオは全てアーント氏が考案したのでしょうか?それともバンドから何かアイディアの提供があったのでしょうか?またそれをどのように組み合わせたのでしょうか?

僕らは彼のバンド・ヴァニシング・ツイン(Vanishing Twin)のことが大好きで、いつもビデオを観ていたので、去年の前半、彼に連絡を取ってみました。(この曲の)メロディーはトモが作って、僕は何か異なる声の響きを探していました。僕にとってこの曲のメロディーは日本の古い民謡を思い起こさせるもので、ランダムに言葉と文章を一緒に付けていったら歌詞が意味を持ち始めました。エリオットが訳してくれって言うから、僕が何の意味もないヘンテコな翻訳を送ったんですが、何とか彼なりに意味が分かったようであのビデオを制作してくれました。彼の色使いやその美しさに僕らは驚かされましたね。


少なくともここアメリカでは、ミュージックビデオがプロモーションの主流だった時代から隔世の感があるのですが、2018年、シングル用にビデオを撮ることにどんな利点があると思いますか?

どんな利点とかは不明ですけど、少なくとも字幕が付いてるから皆んなトモと一緒にシンガロングはできますよね(笑)


ツアー中の幾何学模様に会いに行く予定のアメリカにいる我々のための質問ですが…、ウェルカム・ギフトとして持ってきて欲しい物は何かありますか?

皆んなが僕らの絵を描いてくれるのはいつでも大歓迎で、どれが誰だか当てるのが僕らは好きですね。あとドル紙幣もいつでもウエルカムです(笑)
(文:J. Neas



幾何学模様(Kikagaku Moyo) - Full Performance (Live on KEXP) 2018年10月2日公開



◆あわせて読みたい昨年度のAquarium Drunkardによるインタビュ―和訳: