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18 August 2022

Simone Marie Butler | プライマルスクリームのシモーヌ・バトラー出演ドキュメンタリー映画「Year of The Dog」(2021年)

"Year of the Dog" - サウンドトラックは全曲Little Barrieが担当


Primal Screamのベーシスト、ラジオDJ、他バンドへの参加等、多彩な活動を見せる”僕らの姉貴”ことシモーヌ・マリー・バトラー(Simone Marie Butler)。実は2021年に、路上で暮らすホームレスとその飼い犬についてのドキュメンタリー映画の製作に携わり、自ら出演&ナレーションまで務めている。

この1時間7分のドキュメンタリー映画であるが、日本からはダウンロード不可のようで、あまり報道もされてないようなので、シモ姐のコメントが一番多く載っていた英語記事を翻訳してみることにする。とにかくトレーラーだけでも見てほしい。ちなみにサウンドトラックは、全曲あのバーリー・カドガン(Barrie Cadogan)が担当している。


Year of the Dog | Official Trailer


【元ネタ英語記事】Primal Scream’s Simone Butler on her “eye-opening” new documentary, ‘Year Of The Dog’ (NME 2021年11月12日)

以下、当サイトによる翻訳


ドキュメンタリー映画の新作『Year of the Dog』のプレミア上映に先立ち、プライマルスクリームのベーシスト、シモーヌ・マリー・バトラーが、ホームレスとその犬達を描いた映画の製作中に見出した様々な発見についてNMEに語ってくれた。

本新作はポール・スン(Paul Sng)監督(『Poly Styrene: I Am a Cliché』『Dispossession: The Great Social Housing Swindle』『Sleaford Mods: Invisible Britain』等の作品で知られる)のディレクションによるもので、ミュージシャンでありDJでもあるシモーヌ・バトラーが、Dogs On The Streets(DOTS)(ホームレスとその犬達の健康と福祉のために活動するボランティアグループ)とタッグを組み、彼らが路上生活から永遠に抜け出せるよう支援する様を描いた作品となっている。

映画の概要はこうである。「世界的なパンデミックは社会で最も弱い立場にある人々がいかに危うい存在であるか露呈させた。『Year of the Dog』はストリートドッグとその飼い主の絆に光を当て、英国最大の試練の時に繰り広げられた小さな生き残りの物語を描いた作品である』。


雑誌「Big Issue」のベンダーとシモーヌ・バトラー


動物好きのシモーヌ・バトラーが初めてこの団体の存在を知ったのは、犬を飼おうといろいろリサーチしていた時のことだった。Soho Radioの自身の番組『Naked Lunch』でDOTSの創始者ミッシェル・クラーク(Michelle Clark)をインタビューしてから、本ドキュメンタリー作品のアイディアはすぐ形になり始めた。

「DOTSの活動はとても素晴らしいのに、メディアが十分報道していないと感じたんです」バトラーはNMEにそう語った。「住む家を失ったことや路上生活者だということ、それにそういう人たちが犬を飼うことにつきまとう偏見に一石を投じたくて、何か発信しようと考えたんです」。

バトラーは、この映画製作がいかに「目から鱗の経験」だったかについても語ってくれた。ホームレスの人々が路上で犬を飼うことに対する誤解や通説の数々を払拭する手助けをした経験のことである。




「自分が責任を持たなければならないもう一つの命がそばにいるのって大きな安心感につながるし、路上で生活する人達にとって手助けにもなるんです。やるべきことや責任が生じますからね」バトラーは言う。「それに頑張る理由が出来ますよね。路上で生活するのって絶望的で過酷な状況にもなりますから。犬の面倒を見ることやその犬との尊い絆が、そういう状況に置かれた人達にとってどれほどの生命線になるのか、この経験のおかげで本当によく理解できたんです」。

バトラーはこう続けた。「ちょっと前に友人に言われたんです。自分の犬を飼ったら一瞬で家族になってその子のために死ねるって。住む家がない状況だと人との交流やつながりが希薄になることもあると思いますが、犬の存在や、犬のおかげでできたコミュニティーが、彼らに帰属意識を与えてくれるんです。路上生活ほど孤独で危険な場所はないでしょうから、そういう関係性ってとても大切なんです」。

映画製作への参加から学ぶことも多かったと認めながら、バトラーは過去に抱いていた自身の思い込みが覆されたことも話してくれた。「以前の自分は(路上生活者に飼われるのが)犬にとって良いことなのか疑問に思っていました。でも犬の世話をする路上生活者の人達って、自分より先に犬に食事を与えるんですよね。そういう犬って信じられないくらいよく躾けられているんですが、きちんと社会化されていて、自分を守りケアしてくれる飼い主といつも一緒にいられるからですよね」。

「そういう犬達って、自分を無条件に愛してくれる人間と信じられないくらい素晴らしい生活を送っていて、気性もとても穏やか。問題行動がある犬は一匹もいませんでした。中傷するつもりはないですが、犬のしつけに真面目に取り組もうとしない飼い主だっていますよね。でも路上で四六時中飼い主と一緒に過ごせる犬は、飼い主といつも変わらない関係を保つことができています。お互いに本当に気遣い合ってるんです」。

また本作では、英国の路上生活に関する厳しい統計データにも目を向け「深刻な社会問題」だとしている。バトラーが本作の製作から導き出した結論は、「路上で暮らすホームレスとその犬達に対し、もっと正しい知識を持って思いやりのある見方をすべきであり、この問題にどう対処すべきかもっと深い知識が必要」とのことである。<以降、上映イベントスケジュール部分省略>


ダウンロードはこちらから(UKとアイルランドからのみ可)


◆あわせて読みたい当サイトSimone Marie Butlerインタビュー記事翻訳:


18 October 2018

プライマルスクリームのSimone Marie Butlerインタビュー | Evening Standard

Photo Credit: Eva K.Salvi


Soho Radioの自身の番組「Naked Lunch」でゲストがあまりよろしくない日本に関するジョークを言えば即座にフォローしてくれる僕らの姉貴ことPrimal Scream(プライマル・スクリーム)のSimone Marie Butler(シモーヌ・マリー・バトラー)。数年前のインタビューで「フィアンセ」という言葉を連発しており、最近愛犬絡みの投稿も多いことからもしかして…等思いつつ、UKのEvening Standardのショート・インタビューを翻訳してみた。

【元ネタ英語記事】Primal Scream's Simone Marie Butler interview: 'Mick Jagger is a very fit man' (2018年10月5日)

以下、当サイトによる翻訳



シモーヌ・マリー・バトラーは2012年以来、プライマル・スクリームをパワーアップさせてきた。前任のマニ(ザ・ストーン・ローゼズ加入の為、脱退)とベーシストを交代した年である。彼女はバンドメイトのボビー・ギレスピーやアンドリュー・イネスと共に世界ツアーを行い、Soho Radioに自身の番組を持つ。

「もし自宅が地面に飲み込まれるようなことがあれば、中に飛び込んでベースギターとパスポートを取ってくるでしょうね」。バトラーは言う。「そうすれば少なくともツアーには行けますから」。結局ベースがすべてなのである。


これまでステージから見た一番奇妙な光景は?

前、フェスで誰かが車輪付きのゴミ箱をステージ前でクラウドサーフさせてたことがありました。会場にはラブドールとかあらゆる物が飛び交ってますが、あれはかなり印象的でした。ああいうのってすっごく重いんですよね。


最も「夢じゃないか」と思った瞬間は?

グラストンベリーでローリング・ストーンズをサポートしたことは、自慢に聞こえないよう普通に話すのが難しいですね。でもあれが自分にとって人生のクライマックスなのは間違いありません。


完璧なロックスターを作り上げるのに必要なものは?

ミック・ジャガーのハムストリング筋。彼はとても壮健な男性ですよね。デヴィッド・ボウイの衣装。あとプリンスのヴィジョン。ダイヤモンズ・アンド・パールズ・ツアーの時、アールズ・コートの最前列にいた14才の自分を今でも覚えています。あの時もうプリンスは皆の憧れの存在だったけど、彼の功績はこの先ずっと生き続けるでしょうね。


ロンドンについて学んだことって何かありますか?

ピムリコ(Pimlico)は昔にタイムスリップした街だってこと。あそこはまだ1500のガス灯が現役で、係の人がハシゴ片手に全部廻って、朝晩毎日点灯・消灯してるんです。


何かジョークを言って下さい…。

少年が学校でベースのレッスンを始めました。最初のレッスンから帰宅した時、お父さんが言いました:「今日は何を習ったんだい?」。少年は言いました:「最初の2弦、EとA」。

次の日、帰宅した少年はお父さんに言いました:「パパ、今日は次の2弦を習ったよ。DとG」。3日め、少年は言いました:「今日はレッスンに行かなかった。ライブがあったから」。


※訳者注:ベースは4弦あり、4弦=E(ミ)、3弦=A(ラ)、2弦=D(レ)、
1弦=G(ソ)が開放弦(指で弦を押さえないこと)で弾ける。



シモーヌ・マリー・バトラーはFender社のアプリ(fender.com/play)のアンバサダーを務めている。



◆あわせて読みたい当サイトSimone Marie Butlerインタビュー:


29 June 2017

もっと知りたいSimone Marie Butler | プライマルスクリームのシモーヌ・バトラーインタビュー(2013年)


Photo Credit: Eric Bouccan


【元ネタ英語記事】 Exclusive Interview with the "Mystery Bassist" from Primal Scream !(2013年11月17日)

以下、当サイトによる翻訳


まずは少し背景情報を…。

1996年: The Stone Roses(ザ・ストーンローゼズ)のベーシスト・Gary "Mani" Mansfieldがローゼズ解散後Primal Scream(プライマルスクリーム)に加入。 
2011年: The Stone Rosesがバンドの再結成を発表。Primal ScreamのManiの空席は、少しの間だけMy Bloody Valentine(マイブラッディヴァレンタイン)のDebbie Googeが担当したが、ツアーメンバーとしてであり、固定メンバーとしてではなかった。 
2012年: 10月末、NMEのウェブサイトに「バンド代表からの公式発表によると、Simone Marie Butler(シモーヌ・マリー・バトラー)がBobby Gillespieのバンドにフルタイムメンバーとして加入」との記事。Google検索してみると、占星術師、女優、海上で66日間漂流し生還した女性がヒット。NMEは、どれもSimone Butlerと同一人物ではないだろうとしたが、この時点でPrimal Scream公式はこれ以上の情報を出さず。 
2013年: 8月8日。長きにわたる熱心なPrimal Screamファンとして、筆者はベルギーの「ローケレン・フィーステン」フェスティバルでPrimal Screamのライブに参加。そこで「謎のベーシスト」を初めてこの目で見て聴いて、強く印象づけられる。イケてるベーシスト、生まれついてのクールなルックス…そして非常に「ロックンロール」なセクシーさ。ライブは素晴らしく印象に残るものだった。その夜、Beady Eye(ビーディ・アイ)がGem Archerの事故のせいで出演キャンセルとなったが、残念がるものは誰もいなかった。ライブ後、観客とプレスは満場一致で「Primal Scream最高!」となった。

まさにその翌日、11月にベルギーで別の(屋内)ライブがあることが発表された…それも筆者の生まれ故郷ヘントで!「Simone Marie Butlerに会わなければ」。筆者にはこれ以上ないほど明らかだった。幸運にもSimoneを探し出すことができ、筆者からのメッセージに素早く返信をくれ、50thirdand3rdのインタビューに応じてくれることになったのは素晴らし過ぎる出来事だった。

Photo Credit: Eric Bouccan


先週の水曜日(11月13日)ヘントにて…。
午後遅く「Vooruit」という名のライブ会場のバックステージ。「ハイ!Simone。お会いできて嬉しいです」。頭悪そうに見えたかもしれないが(気にもしないけれど)、筆者はただ「憧れのベーシストとのインタビューが実現したんだ」と感じていた。ゴメンよ、Kim Deal [訳者注: Pixiesの元ベーシスト]。我々はインタビューの為、ライブ会場内にある居心地の良いカフェに移動した。

こんにちは!Simone Marie。インターネットや雑誌では、あなたについて知ることのできる情報がまだほとんどないんですが、“謎のベーシスト”の過去について少し教えて頂けますか?

自分はロンドンで生まれ育ちました。父はいろんなポップバンドのプレーヤーで、家ではたくさんのミュージシャンに囲まれていました。父は、Roy Orbison、Elvis Presley、Buddy Holly、The Beatlesやその時代の有名アーティストの音楽を聴いていて、それ以来ずっと音楽的な環境に身を置いています。数年前、ロンドンのデンマーク・ストリート(※楽器店が多い)にある「Vintage and Rare」というギターショップで働き始めたんですが、そこでもたくさんのミュージシャンと知り合いになりました。Primal ScreamのギタリストBarrie Cadoganも昔あの辺で働いてたんです。ある時、もっと先に進みたいなと思って決めたんです。ショップでベーシスト達に出会って、ベースという楽器の全てを知りたくなって、ベースを習い始めたんです。10年とか12年間、いろんなバンドに所属しました。有名なバンドではなかったですが、ロックンロールもエレクトロも演りました。DJもたくさんやりましたね。

あんな伝説のロックバンドに加入するのってズバリどんな気分だったんですか?

Bobbyのことは前から知っていて、Barrieとは10年前から知り合いでした。Andrewとは別のライブで会っていたし(筆者メモ:Andrew InnesはPrimal Screamの長年のメンバー)、Primal Screamのことはずっと大好きでした。だからPrimal Screamが固定の新ベーシストを探してた時、自分の名前が挙がったんです。然るべき時に然るべき人を知っているのって、幸運のおかげっていうのもある程度はありますが、自分の幸運は自分で掴まないといけませんよね。ここ10年、いい所までいけるよう本当に頑張ってきたから。とあるジャーナリストがPrimal Screamに加入してから「苦行の洗礼」みたいなのを感じるかって聞いてきたんだけど、その表現はBobbyが良いニュースがあるって電話してきた時にピッタリ当てはまるでしょうね。あのバンドと契約したのは正しかったし、とても誇りに思っています。

新ベーシストとして最初のライブはいつどこで?

実はラジオ番組だったんです。でも自分にとって最初のちゃんとしたライブは、香港のClockenflap Music & Artsフェスティバルでした。昨年12月、3万人の前でしたね。かなり緊張しましたけど演りたいっていう気持ちの方が恐怖心に勝っていました。本当に素晴らしかったです。

バンド内ではクリエィティブなことって何かされていますか?

Bobbyはとても寛大な人で、自分を受け入れてくれて自分のままでいさせてくれるんです。BobbyはManiになろうとするなって言ってくれて、それでBobbyのことをとても信頼するようになりました。もちろんレコーディングでPrimal Screamの楽曲に貢献したいっていう気持ちはありますが、レコーディングされた楽曲とライブ演奏ってまた全然違うんですよ。ライブではアレンジを変える曲もあるし、そういう意味では、ステージでのクリエィティブなプロセスに関わることができていますね。
Bobbyについてはどうですか?

Bobbyは素晴らしい作詞家ですね。文学や詩に詳しいし、真実の追求者でとても情熱的な人。本物のアーティストですよね。バンドのメンバーは皆んな素晴らしい人達で、音楽に取り付かれてて驚くほど音楽知識が豊富。Primal Screamの素敵なところは、「Screamadelica」、「Exterminator」、「Vanishing Point」みたいに音楽的に全く異なる作品を制作していること。だから彼らは偉大なバンドなんです。未だにあらゆる種類の影響に対してオープンだし、作品作りに熱心で、実験的なこともまだしていて…だから彼らといるとホッするんです。

ロックンロールの世界はもう男性に支配されていないのでしょうか?

確かに音楽業界で、男性がまだ目立つ存在であることは認めるけど、自分がこの業界にいる限りでは、性差別的に攻撃された経験はありませんね。自分はデンマーク・ストリートのショップでマネージャーを務めた最初の女性なので、そういった意味で自分自身を証明してみせたかったんですが、素晴らしい友情以外に何もありませんでした。

ステージに上がる前に何か必ずすることはありますか?

コカコーラとウォッカをミックスして一杯飲んで、それからヨガを…(爆笑…ホントはヨガは全く無しでウォッカだけな模様)。ステージに上がる1時間前に、ミュージシャンのほとんどがやるように凄く集中します。そうすると、アドレナリンが流れ始める…。

好きなベーシストは誰ですか?

一人には絞れなくて何人かいますね。The StranglersのJ.J. Burnel、Jah Wobble、The CureのSimon Gallup、Siouxsie and the BansheesのSteven Severin、Gary Mansfield、Robbie Shakespeare、それから…おっともうこんな時間。サウンドチェックに行かなきゃ。あなたも来ていいですよ。

インタビューに時間を作ってくれて本当にありがとうございました!

*Simone Marie Butler: セカンドネームである“Marie”は、彼女の両親がElvisの娘であるLisa "Marie" Presleyにちなんで名付けたもの。



 ◆あわせて読みたい当サイトSimone Marie Butlerインタビュー記事翻訳:


 

15 June 2017

Simone Marie Butlerインタビュー|Primal Scream(プライマル・スクリーム)のベーシスト、Soho Radio DJ


【元ネタ英語記事】Interview: Simone Marie Butler - "It's up to me to be inspired" (Gigsluts 2017年1月29日)

以下、当サイトによる翻訳


ミュージシャン、ヴォーカリスト、DJとして高い評価を受けるシモーヌ・マリー・バトラーは、そのユニークさから音楽業界注目の存在だ。大規模なコンサート会場から小さなDJパーティーまで分け隔てなくこなす彼女のこだわりのなさは、気持ちいいほどに見事である。

ここ5年程Primal Screamでベースを担当している彼女は言う。「自分の好きなことで依頼が来るのって未だにワクワクしますね。去年はEd Harcourtや、Faris BadwanとRachel Zeffiraが組んでるCat's Eyesと共演したんですが、コラボレーションするのはいつでもスリルを感じますね。でも一番最初にPrimal Screamとライブをすることになった時、私に電話してきて『ベーシストを探してる』って言ったのはBobby [Gillespie] だったんです」。― 彼女はそれにイエスと答えた。シモーヌにとって、音楽はすべてなのである。

「DJとしてSoho Radioの番組もやってますが、これはSoho Radio開局から3年間ずっとですね。自分の番組ではメインストリームに逆行するよう心掛けて好きな音楽をかけるようにしています。昔のMC5のブートレグをかける時もあれば、7分もあるリミックス、レーベル契約のないアンダーグラウンドな曲、リリースされたばかりの曲やお気に入りの古い曲をかけることもあります。番組の企画は全部自分でやっていて、インタビューにゲストを呼んだりしています。Soho Radioってそんな風に自由にやらせてくれるから、番組を自分流にアレンジできるんです。ラジオ番組のDJを担当する良い点のひとつは、ミュージシャンとしての自分を投影できることですね。メインストリームのラジオにありがちな編集的なことも一切ありません」。

より興味深いアーティスティックなプロジェクトも、メインストリームから離れた場所で見つかるものだ。うなずきながらシモーヌは語る。「これまでとは異なる分野に自分を置いて、違ったやり方で取り組むようにしています。まさにBowieが言ってたことなんですが、自分より優秀な人達と仕事してみろ、そこでちょっと居心地が悪いと感じたら、正しい場所に身を置いているっていうことだって…。良い仕事をする人間として認知されたいですが、自分のことは自分で評価するしかないですよね。受けた仕事は巧くやりたいし、向上心と向学心は忘れたくないですね。音楽には常に発見すべきものがありますから」。

世界で1番ビッグなバンドのひとつPrimal Screamでのシモーヌの存在は、Sly and the Family Stone、New Rotary Connection等、ファンキーで多様なジェンダーを許容する音楽ムーブメントを彷彿させる。どちらもバンドのルックスやサウンドはこうあるべきだとの固定概念に束縛されることのなかったバンドであり、その記憶に残るポジティブなサウンドで歴史に名を残している。「”女性ベーシストであることってどんな感じ?”ってよく聞かれるんですが、そんな時は”じゃあ男性の歯科医や男性のファッションデザイナーであることってどんな感じ?”って聞き返すようにしています」。ブリクストンの昼下がり、指の感覚がなくなるような寒さの中、コーヒーを片手に彼女は笑った。「正直言ってそんなこと考えたことないんです。全く気にしたこともない。でも音楽業界で目立つ存在だってことは自覚してます」。


Primal Scream - It’s Alright, It’s OK (Official Video)


だが彼女は性別が理由で差別された経験はないのだろうか?「自分がやっていることで正面から女性差別を経験したことはないです。仕事ばかりしているので今後も経験することはないと思います。ミュージシャンやクリエーターにそういう発想をする人はいないですから。だからといって女性差別は存在しないとか、他の業界と較べて音楽業界にもっとひどい点があるって言ってるわけじゃないですよ。音楽業界にあるとすれば、ビジネスや企業側に多いんじゃないでしょうか。ただ自分の周りはそんな感じではないですね。Carol Kayeが言ったように「音符に性別はない」みたいな感じ。もし私がポップミュージック寄りにいたり、ソロアーティストだったりしたら、そういうのをもっと経験したのかもしれませんが、音楽ビジネスの中で女性だからといって不安を感じたことは一度もありません。でもレコードレーベルで働いてた時はもっと性差別があったし、楽器店を運営していた時には、女性を見下してるな…みたいなのはかなり経験しました。でも自分が女性だからこれができないんだと感じたことはないし、若い女子がそう感じる世の中であってはいけない。自分が受け入れてもらえないんじゃないかと不安になったこともありません。そもそも女を利用して自分を売り込もうなんて考えてないですから。そんな風に考えてるなら今自分がやっているようなことはやってなかったでしょうね」。

「経験上、行動を起こすのを躊躇してる時の方が多くのことを学べるんですよ。イエスって言うのを怖がる人は多いけど、自分の場合、ノーと言う方が怖いですね」。…つまりクリエィティブな作業に対して、己を制限しないということ?「そうですね、音楽を作る人になりたいと願いながら私は育ったんです。父はミュージシャンでギタリストだったので、家の中にはいつも音楽がありました。常に楽器に囲まれていましたし、子供の頃はミュージシャンが出たり入ったりする環境でした。それが自分にとって普通だったんです。音楽は生計を立てるためのものだったんですね。父のレコードを聴いて育ったんですが、それはThe Beatles、Eddie Cochran、Little RichardやRoy Orbison等、もうロックンロール三昧!音楽以外の仕事をするなんて想像もしてませんでしたし、定職に就くといつもアンハッピーな気持ちになっていました。自分が大好きなものと繋がってないと感じていたんですね。音楽とバンドはいつも本業の合間にやってたんですが、そうですね、多くの人が無料のストリーミングで音楽を消費する時代、音楽で食べていくのは当然難しい場合もあるでしょう。でも音楽で食べていくのに有名にならなきゃダメだって思い込んでる人が多いけど、それは違うと思います。働きながらミュージシャンをやって本当に素晴らしい人生を送ることだって可能だと思います。世間の注目を浴びているのに全然お金がないなんてこともあり得ますから、どちらもホントですね」。つまり自分自身に正直になる、さらに言えば、音楽の女神に忠誠を誓って生きよう…という話である。

ベーシストに関してシモーヌは、モータウンのレジェンドJames Jamersonや、Charlie Mignus、Paul Simonon、Joh Wobble、Steven Severin、Simon Gallup、Gail Ann Dorseyを尊敬しているという。それ以外では、Warren Ellis、Anton Newcombe、SavagesのJehnny Bethのようなアーティストの名前も挙げている。「ミュージシャンになることって、自分の好みじゃない音楽とか、昔好きじゃなかったものにもオープンになって、あまり批判的にならないってことでもあるんです。その結果、いつも物事の良い面を見つけようとする人間になれる。ある種のジャンルやバンドがあまり好きになれないっていうのはあるかもしれないけど、例えばそのアルバムが如何に巧く作られていて良い作品なのか評価できるようになります。このことは、どんなジャンルでも写真撮影とか何かにハマっていても、誰にでも当てはまることなんです。作品についてオープンマインドになるのか、逃げ腰になるのかの二択なんです」。

 シモーヌはこれからのことについてプランニングしているのだろうか?「あまり先のことは考えないんですよ。そうした方がいいのは分かってるけど、自分は5ヶ年計画するタイプの人間じゃないです」彼女は笑う。「あるいはもし5年も先のことを計画するとすれば、それは人生の区切りってことになるでしょうね。いろんな理由で人生の多くの節目で脱線しちゃってますから…まぁそれはまた別のインタビューで…。自分のやりたいことをやり続けたいです。間違いなく音楽は自分の人生を救ってくれました。ベースを弾くのを止めることはないでしょうね。他にはリミックスのやり方を学ぶとか、スタジオでの制作スキルをもっと身に付けたいですね。いつかは自分の音楽プロジェクトもやってみたい。写真にも携わっていきたいですし、長年やりたいと思い続けてるミュージックビデオの制作も学びたいです。Douglas Hartの作品にインスパイアされてますから。彼には本当に才能がありますね。あと音楽のヴィジュアル表現にも興味があります。だけど今の自分の立ち位置にも満足しているし、自分の能力を多方面に広げるのもいいと思ってますが、そうするかどうかは自分次第。決めるのは自分の意志でなきゃ。何かにインスパイアされるかどうかは自分次第だということです」。

「でも音楽をやっていく上での大きな落とし穴は、こだわりを失くしてしまうことと、うぬぼれてしまうこと。有名人になるのを目指すゲームなんて、リアルじゃないし参加すべきじゃない。今ってYouTubeやInstagramでフォロワーが何人いるかを重視し過ぎるけど、それってただありきたりなことを喜んでいるだけ。ソーシャルメディアはいろんな意味で人の心を蝕んでしまう。人の最悪な部分を引き出して、リアルタイムな人間関係や周りの世界から人を隔離してしまう。オンラインでの居場所が重要になり過ぎて、事実を大げさに表現するのに悪用されることだってあるから健全とは言えないですよね。何もかもキャッチアップしてリアルな世界より大切だと思ってるとしたら間違いでしょう。音楽をやることと有名になることは全く別物なんです。自分の場合、客観的で冷静な人としか付き合わないようにしているし、人生的に遅咲きでクリエィティブな表現手段を見つけたので、これまでに自分に与えられた機会のことを、他の人より有難く感じられるんですよ」。

シモーヌはまた、慈善活動も行っている。ステージ4の大腸ガンの治療を続ける友人、DelaysのGreg Gillbert(訳者注:残念ながら2021年逝去)のため、2月17日にCavalry(訳者注:資金集めの為に設立された団体名)によるチャリティーライブを開催するのである。シモーヌはMystery JetsやBand Of Skullsと共に参加予定だ。「自分達はGregの命を救いたいだけなんです。NHSでは必要な治療を受けられないから」。そう答える彼女の目は一転して哀しみで曇っていた。「彼は信じられないくらい綺麗なソウルの持ち主で、これまで出会った中で1番優秀な人物のひとり。ヴァレンタインにDelaysのシングル『Valentine』を1位にしようというキャンペーンもやっています。皆んなの魂が集まれば、誰かの人生を変える力にだってなれるんです。自分の人生で出会えた素晴らしい人達がまだこの世にいるうちに、心から感謝の意を表すべきなのにそうしないっていうのもアリかもしれませんが…我々には細かいことを言っている暇はないんです」。