2018年のドラマー、サミュエル・トムズ(Samuel Toms)の突然の脱退。これについて無難な答えに終始していたテンプルズ(Temples) のメンバーが、独メディアにチラっと本音を語ったインタビューがあったので、遅ればせながら翻訳してみることにする。思えば初来日の時も、サムだけがUKから直行。他のメンバーはドラムに代役を立てたSXSWを終え、アメリカから来日…。他のメンバーが長年、サムのバンドに対する姿勢に不満を持っていたことが読み取れる内容となっている。
【元ネタ英語記事】Temples - Interview (Bedroomdisco 2019年9月27日)
以下、当サイトによる翻訳
これまでアルバム3枚をリリースされているので、 アルバムの制作過程について、 スタートから完成まで どう進めていくか、バンドなりのお考えがあると思います。テンプルズの通常進行のレコーディングって、ざっくり言うとどんな感じなんですか?
トム: 僕らの場合、いつも時間がかかりますね。作曲とレコーディングについては、かなり集中的に取り組んでいるので、もしアルバムを6週間で完成させるとしたら、どうすればいいか分からないかも…。じっくりアイディアを練り上げてから、1枚のアルバムと呼べるものに時間をかけて仕上げていくスタイルが僕らは好きですね。
ジェームス: 曲によってはコアとなる要素が出来上がるのにミニマムな時間しかかからないこともある。例えば『Hot Motion』がそうで、リズムセクションとメロディーが先に上がっていて、僕的にはあの曲を盛り上げてるのはベースだと思うんだけど、完成まで数日しかからなかった。曲によっては熟成するまでに時間を要するものもあるから、平均的なやり方みたいなのはないんですよ。他の曲を仕上げるのにかかりっきりで2ヶ月位ほったらかしにしてた曲もあったかもしれない。ある曲のアルバム内での位置付けとか、どこを変えなきゃならないとかは後になって初めて気付くものだし、なかなか分からないものなんです。じっくり考える期間を経たからこそフレッシュな視点が持てるんですよ。
アダム: このアルバムは、プロダクションとか、しっくりくるアレンジの仕方だとかに重点的に取り組んでいて、余分なものは削ぎ落されてる。前作ほどエフェクトも多くないし。
ファーストアルバムを出してから、60年代志向のヴァイブスから脱皮したいと思われていましたか?
ジェームス: アプローチの仕方を変えたいとは思ってましたけど、60年代風なサウンドはもう出来ない、シンセサイザーは止めようとかは思ってなかったです。ファーストアルバムについては、昔の誰かのモノマネに過ぎないから好きじゃないって人が割とたくさんいた ことは心に留めておくべきで、そういう人達にとってあのアルバムは目新しくもなく、オリジナリティーにも欠けるわけです。(2枚目以降について)僕らはもっと現代的なものを作りたかったんだと思います。そうする上で、自分たちの本能的な直感とは真逆なものを追い求める形になって、自分達の特徴的なキャラクターの中には楽曲から抜け落ちたものもありました。ファーストアルバムは基本、直感に従っただけ。セカンドアルバムは直感との闘いで、自分たちが前にやったことより優れた何かを生み出せれば…って考えながら制作した感じ。
ファーストアルバムが好きだって公言した人もいましたよね。ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)は、ああいう音楽をもっとラジオで聴きたいって言ってましたし。そういう期待に応えるのは難しいと感じていましたか?ハードルが上がって重たいとか?
アダム: 最初の頃は、そんなこと考えてる時間さえあまりなかったですね。すぐにツアーに出なきゃならなくて、それも世界中を廻るハードなツアーで、今まで見たこともない場所に行ったり、アメリカのテレビ番組に出たのはとても奇妙でシュールな体験だったんだけど、全てが本当にあっという間だった。それから2年間ツアーを中断して、内に籠って『Volcano』を作り始めたんですが、重たいとかは思わなかったですよ。
ジェームス:セカンドアルバムっていうのはかなり特殊 で、この感覚は、1枚目にしてアルバムを大当たりさせた人じゃないと、説明しても分かってもらえないと思う。取るべき道はたった2つ。ファーストアルバムと同じことをしてファンの多くをキープするか、何か新しいことをするか。ホント、特殊な状況なんですよ。次回作を作りたいわけなんだけど、そこには一定レベルの期待値みたいなのがあるから、ファーストと全く同じことはやりたくないっていう…。プレッシャーはあったと思いますよ。曲は書けるんだけど、セカンドにふさわしいサウンドを探しあぐねてた。サウンドは見つかったし、シンプルにまとまったアルバムにはなったけど、もう二度とセカンドアルバムを作らなくていいっていうのは最高 ですね。
VIDEO
Temples - "You're Either on Something"
サム・トムズ(Sam Toms)がバンドのドラマーでなくなった理由を明かして頂けますか?
ジェームス: サムとはずっと話し合う必要があると思ってたんだけど、それで脱退してもらうことになったんです。バンドっていうのは、いつもメンバーの顔触れが固定されてなきゃならないなわけで、お互いに気遣いあう関係性も必要。個人的なレベルだけじゃなく音楽的にもね。僕らは自分たちが作る音楽に真剣に取り組んでいるし、それがライブパフォーマンスっていう話になると、ステージで全員揃って演奏するっていうのが絶対ハズせない肝 になるわけです。ライブ後に何が起ころうと全然構わないんだけど、そのことでライブや自分たちの音楽活動に支障が出るとしたら、それってクールだとは言えないですよね。僕らは何年もそういうのに目をつぶってこなきゃならなかった。 だから決断する必要があったんです。
ある意味、自己管理がなってなかったということ?
トム: そうだと思いますよ。それって無条件なことですよね。僕らは皆、ノーサンプトンシャーにあるケタリングっていう町で一緒に育ったようなもので、そういう絆って人と人を団結させるものじゃないですか。バンドの中では自分の担当するパートを演奏しなきゃならないわけで、ジェームスが言ったように、もしライブをやるのに支障が出るとしたら、それは僕らの音楽活動に妥協することになってしまう。
支障が出るってどんな風に?
ジェームス: (現場に)来ないとか?
トム: うん、主にそれだよね。4人組として演奏出来ないことが結構あった けど、気分のいいものではなかったですね。
えっと、サムは今、規律にうるさいことで知られるファット・ホワイト・ファミリー(Fat White Family)でプレイしてますよね。完璧にうまくやっていくには…。
全員: (笑)
アダム: 彼らは全員同時に遅刻するだろうから、誰も遅刻してないってことになる。なかなかしたたかな策略かも。
このアルバム(3作目の『Hot Motion』)のドラムパターンは面白いですよね。まるでディストピアのマーチングバンドからやって来たようなサウンドに聞こえる楽曲も多いです。事前に発表されたコメントの中で、『The Howl』のことを、『古代の祖先に敬意を表し、足を踏み鳴らし前進していくリズムセクションに鼓舞される戦闘への招集』と表現していらっしゃいます。(サードアルバムは)歴史的な意味での英国人気質的なものを狙った作品なのでしょうか?
トム: そうですね、(3作目は)英国の歴史だとか感性から来ている部分は多いですね。ストーリーテリングやソングライティングに対するアプローチの仕方や歌詞、楽曲の壮大さ、メロディーに対するこだわりとかもね。今僕らがやっていることの強味でもあり、自分達のことをそれほど真剣に考えない英国人的な気質とブラックユーモアなコメディーの要素が組み合わさってるっていうか。
アダム: でも意図的にではないよね。『この曲は英国っぽくなったかな?』とか、じっくり考えてやったわけではないです。僕らが英国人で英国音楽のファンだからそうなっただけで、持って生まれた気質なんでしょうね。
ジェームス: コメディーでも童謡でも脚本でも、悲劇とユーモアをほぼ一言で言い表すことが出来るのは、僕らのDNAの中にあるものだよね。このアルバムにはそういった要素がある。うん、これは英国のレコードなんだけど、僕らの中にあるヨーロッパ人の部分も現れてる。だからブレクジット(Brexit)なアルバムじゃないし、『ブリテン・ファースト(Britain First)』でもない。
国民投票には行かれたんですか?
全員: はい。
EU残留に投票?
アダム: 僕ら3人共、それと僕らと同世代の知り合いは、ほぼ全員そうだよね。
トム: 統計的に言うと、(投票後に)亡くなった人の数と参政権を得た人の数をプラスして投票結果に足せば、今なら残留っていう結果になるらしいよ。
アダム: 僕らの故郷ケタリングは、離脱のパーセンテージが最も高い地区のひとつだったよね。
トム: ってことは、僕ら残留組3人は孤立しちゃってるってことか(笑)。
アレクサンダー・ボリス・ド・フェファル・ジョンソン(Alexander Boris de Pfeffel Johnson)が次期首相になることについてはどう思われますか?
ジェームス: 崩壊していく世の中を目の当たりにするっていうのはエキサイティングかも(笑)。保守党が与党でいる限り、僕らとの共通点は何もないですね。国民をさらに分断するおかしなことさえ導入しなければ、誰が首相になろうとどうでもいいかな。僕らの国で助けを必要とする人達にとって、首相が誰とかあまり関係ないんですよ。いいなって思える候補者はゼロだから。ホント笑っちゃいますよね。ボリスって道化師みたいで、まるで漫画のキャラクター。一国のリーダーって感じではないですよね。
『Atomise』という曲は、我々が種として生き残る為、環境に配慮すべきだという警告とも取れます。迫りくる危機に対して行動を起こそうといったメッセージを発信すべきだと思われていますか?
トム: そうですね、全くその通りです。自分達を取り巻く環境とのスピリチュアルな繋がりというか、一方で自然を恐れながら、究極的には自然と繋がっていたい…みたいな。でも6月のベルリンが摂氏40度とかって恐くありませんか?氷冠が溶け出して、やがて世界が水没するとしたら?僕らは母なる地球を大切にしないといけないんです。
特に、皆さんは島国出身ですから…。
全員: その通り!
アダム: みんな忘れちゃってるけど、英国はあんなに小さな島なんだし、僕らは小さな島国の民族でしょ?小さな変てこな島の民でしかない。もし母なる自然が津波か何かを引き起こすことがあれば、もう壊滅的ですよね。
もっと軽い話題に移りましょう。サイモン・レイノルズ(Simon Reynolds)が最近、グラムロックとそのレガシーに関する著書『Shock and Awe』を出版しました。『The Beam』や『Step Down』といった楽曲には、このジャンルと同様の興味が見て取れますが、バンドとして、耽美なグラムロックからどんな影響を受けていますか?
トム: 僕もあの本を買って半分読んだところです。レイノルズの言葉を借りれば、1950年代以降の音楽でアイコンという概念が生まれ、そのアイコンに1970年代の奇妙キテレツな加工が施された結果、狂気な世界観で面白みのある新たな一面が音楽にもたらされた…ってことだと思います。
ジェームス: グラムロックにはちょっといかがわしいいところもありますよね。ヘアグラムとか、呼び方はどうであれ、グラムロックのパクリとか思われたらヤだなぁ(笑)。ああいうアンドロジニー(両性具有)なところが、ちょっといかがわしく感じるし、ブリティッシュなのかも。だけどレコーディング方法を除けば、音楽的にそんなに変わってるわけじゃない。トムが言ったように、50年代の曲のセンスって、基本コード少なめで、ハッピーでメランコリックなメロディーで、ちょっと童謡チック。でも70年代になると、カミソリの刃みたいな、ミキサーにかけられたか、おろし金の上に乗っけられたようなギターサウンドの渦に放り込まれる。かなりヘビーで、グラムロックにもそういうところがあるんだけど、とても本質的で直感的で大胆不敵、誰かが身を潜めて隠れてるみたいなサウンドじゃない。グラムロックには僕らも感じるものがあるし、アイディアを取り入れてる曲もあります。まぁ音楽の引き出しの一部ですね。
トム: でもグラムロックのサウンドにはもっと注目すべきじゃないかな。例えばボウイ(David Bowie)やボラン(Marc Bolan)。グラムロックに必須の神秘性や魔力がなければ、うわべだけの使い捨てとしてすぐ忘れ去られてしまう。賞味期限だって短い。僕らがグループとしてグラムについても追求しようとしてるって、みんな分かってくれるといいんだけど。
VIDEO
Temples - "Hot Motion"
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