27 November 2017

幾何学模様(Kikagaku Moyo)| The Aquarium Drunkard インタビュー


2017年11月の”来日”ツアーが好評だった逆輸入バンド「幾何学模様(Kikagau Moyo)」。そんな彼らが最新EP「Stone Garden」のリリースに合わせ、渋谷の喫茶店茶亭羽當(さていはとう)で行ったインタビューを翻訳しました。

【元ネタ英語記事】Kikagaku Moyo :: The Aquarium Drunkard Interview(2017年4月20日)

以下、当サイトによる和訳(前文は省略)



幾何学模様はどんな風に結成されたんですか?

幾何学模様:僕[訳者注:ドラマー兼ヴォーカリストのゴウ・クロサワ氏]がギタリストのトモと出会ったんです。トモは映像で留学しててアメリカに住んでたんですが、帰国して再開して「OK、バンドやろうぜ」ってなったんです。2人だけで。僕はドラムをやりたかったんですが、やったことはありませんでした。トモはギターを弾くって言ってたんですが、本当は弾けませんでした(笑)。それでほとんど毎晩、古いスタジオに真夜中から朝まで籠るようになりました。友人が働いてたからタダで使わせてもらえたんです。エンドレスでジャムをしようとして「2人じゃ何もできない」ってことにすぐに気付きました。たった2ピースで何ができるの?ガレージロック的なガレージとか、サイケデリック、どちらにしてもつまらないかもってなって。

それでメンバーを探そうとしたんですが、僕らは経験のない人間を見つけたかったんです。演奏の仕方は知らないけど、ただ一緒に音楽をやりたいみたいな人。あちこちにビラを貼って、大学に行ってサイケデリックなポスターを作って配ったりしていました。トモなんてあちこち貼り過ぎてトラブルになってましたね。「ダメだよ~、何でこんなにサイケデリックのポスター貼りまくってるんだ!?」って(笑)。で、ある日ベーシストを見つけたんですが、彼は自分のドローンプロジェクト用に自動販売機の音をレコーダーで録音しているところでした。僕らが話し掛けて「何やってんの?音楽やろうぜ」「ああ、OK」ってなって。もう1人のギタリストはトモが通ってるのと同じ大学で働いてたんですが、見た目がすげぇ~変わってて。髭ヅラでロン毛でタバコ巻いてて…。「楽器やる?」「やる、やる、やる」「バンドで弾きたい?」「うん、OK」って。僕らはお互いを全然知らなかったんです。それから僕の弟がシタールを弾くんですが、インドから帰国したんです。こうして僕らは一緒に音楽をやるようになって幾何学模様が結成されたというわけです。

ライブについては、東京だと全くシステムが違うから難しいんですよね。演奏するのにお金払わないといけないんです。30分から35分のセットで300ドルが相場です。数回やって「これじゃ何にもならない」ってなって海外に出ることを決意しました。2週間オーストラリアツアーをやったら事がうまく運び始めました。とあるレーベルからオファーをもらって、2014年レヴィテーション(旧名称オースティンサイケフェス)に出演したんです。

それから最初の1枚は英国のレーベルからリリースしたんでしたっけ?

幾何学模様:1枚目はギリシャのレーベルからです。Bandcampに上げたら見つけてくれて「OK、ウチからリリースしてあげるよ」って言われて「ギリシャ?」ってなりました(笑)。他のレーベルにも送っててサウンドが弱過ぎとか言われてたのに。

大人になる過程で楽器はやらなかったんですか?

幾何学模様:あんまり。ピアノは弾いていました。クラシックピアノです。あと学校のブラスバンドでホルンや金管楽器も。トモはチェロを弾くんですが、バンドはやっていませんでした。

君達の始まりのストーリーって本当に素晴らしいですよね。僕はそんな風に結成したバンドを他に知りません。

幾何学模様:サイケデリックって演奏が巧いとかそういうことじゃなくて、もっと共同作業的なものなんです。メンバーのバックグラウンドが全く違ってて音楽も違うものを聴いている。それをどう融合させるか考えたんです。

バンドとして「自分達のサウンドに伝統的な音楽を融合したい」と考えたんですか?それとも弟さん[訳者注:ゴウ・クロサワ氏の実弟、シタール奏者のリュウ・クロサワ氏]がいるから自然とそうなったのでしょうか?

幾何学模様:自然の成り行きでした。僕の弟は今の音楽を全く聴かないんですよ。インドの伝統的なシタールを学んでいましたから。なのでそれをどう融合させるか考えるのは大変でしたが、どうにか形になりましたね。

幾何学模様のサウンドについてですが、特に初期のものはかなり瞑想的ですよね。それって能力不足のせいだったのかな?それとも…。

幾何学模様:能力不足のせいです(笑)。日本のバンドって総じて技術的に巧いんですが、僕らは本当に演奏が下手だったんです。だから「ごまかしちゃおうぜ」「どうやって?」「ドローンをやればマジで瞑想的な感じになる」。そうすれば、何かテーマみたいなものがあってやってるんじゃないかって思ってもらえる(全員笑)。

スモークマシーンを2台買ったんですが、出し過ぎちゃって観客から僕らが見えなくなってしまって(笑)。笑っちゃいますよね。何回か火災報知器が鳴ったみたいで警察と消防が来て止めていました。凄く怒られましたね(笑)。

じゃあ宗教的アプローチだったというわけではないんですね…。

幾何学模様:違います。でも最初僕らは曲作りの方法を知らなかったんです。「どうやるの?」ってコード進行も知らない。何も分かってなかったんです。それで音楽以外の経験からアイディアを得ようとして、キャンプに行ったり山に数日間籠ったりして楽しく過ごしていました。で、「この経験をどう音楽に変えるんだ?」ってなっても多くのことはできないわけです。だけど、僕らが共有した感覚はこんな感じだったっていうのは確かにある。僕らはまた山に楽器を持っていって、その感覚を曲にしようと楽器を弾いてレコーディングしていました。曲作りについて何も分からなかった頃、僕らはそんな風にして自分達だけの場所でスタートしたんです。

友人から聞いたのですが、バンド名は「数学的模様」って意味なんですよね。

幾何学模様:「幾何学」です。

幾何学模様ですか。可笑しいですね、マスロックをやってるバンドかと思ったら君達がやってることは全然違いましたね。

幾何学模様:(笑)。(バンド名の由来は)僕らが夜通しジャムセッションしてたからなんですよ。昼間だとお金がかかるから夜中しか長時間プレイできなかったんです。さっきも言ったようにスタジオで働いてる友人がいたから、真夜中から朝7時まで、夜しかスタジオに行けなかったんです(笑)。だから超疲れてましたね。働いてからスタジオに入ってジャムセッション。あまりたくさんはできませんでしたね。1音出すだけで精一杯(笑)。で、スタジオを真っ暗にするんです。そうすると睡魔が襲ってくるんですが、ノイズ系のライブを観る時って最後まで音を出し続けてたやつが勝ちみたいなのってあるじゃないですか(笑)。最初に止めて見回したやつが負け。ノイズを出し続ける最後の人間にならないといけない。そんなノリでしたね。だから本当に疲れてる時でもプレイし続けるんです。そしたらヴィジュアルが見え始めちゃって…。暗くて何も見えないから皆んな目を閉じてたんですよ。そしたら瞼に模様がたくさん見えるようになって、その経験を皆んなにシェアしたら「いいね、バンド名は幾何学模様にしよう」ってことになりました。

睡眠不足に起因するサイケデリックな経験ですね。

幾何学模様:そのとおり(笑)。

大人になる過程で、メンバーの皆さんは、今、幾何学模様がやってることに影響するようなバンドを何か聴いていましたか?

幾何学模様:日本のバンドで?

日本でも海外でも。

幾何学模様:僕らって「どんなの聴いてた?」って話そうとしても共通するものが何もなかったんです。で、一緒にやり始めて1年後位に共通項が出始めるようになった。ダウド[訳者注:ライブでセンターに所在するリードギタリスト]はヒップホップを聴いてたし、僕は全く違ったクレイジーなのを聴いてた。トモはパワーポップが好きだし、ガイ[訳者注:長身のベーシスト]はブラックメタル好き。だから僕らのうち2人が同じ音楽を気に入った時は「おい、聴いてみろよ」ってなるんだけど、ダウドが「ヤだよ、好みじゃない」って…。CANとかクラウトロックなら好きなんだけど、そんなでもないとか、ホント難しいんです。



それってバンドが本当にピュアなところからスタートしてるってことだから素晴らしいですよね。無理に作られたものじゃないところが。バンドがスタートした頃は、ただ出来ることをやるっていう音楽への実用的アプローチってことだったようですが。

タイラー・ブローレン(マネージャー):サイケデリックを聴いてたのって多分ゴウだけだよね。

ゴウ:うん。他のメンバーは皆んな全然違うからね。そうでもないか(笑)。

タイラー:でも最初出会った頃、日本のサイケデリックのカッコいいのを、ゴウはたくさん聴かせてくれたよね。Strawberry Pathとか。

ゴウ:Flied Egg[訳者注:原文は「Fried Egg」となっているが、正しくは「Flied Egg」]とか。Blues Creationとか。

タイラー:もちろんFlower Travellin' Bandも。

Strawberry Path?

幾何学模様:うん、70年代のヘビーなサイケ・プログレって感じのバンドです。ギターソロだらけの。音楽を聴き始めた頃、昔の欧米の音楽から聴き始めたから、日本にああいう音楽があるってことを知らなかったんです。90年代のJポップを聴き始めた頃「本当にくだらない」、僕の聴く音楽じゃないって思ったんですが、20才位の頃ああいうのを聴き始めて「日本にもこんなカッコいいのがあるんだ」ってなりました。70年代以降のものですが、今では完全に忘れ去られていますね。

見つけるのは大変?

幾何学模様:本当に大変です。でもああいうバンドは欧米での知名度の方が高かったりするんですよ。Flower Travellin' Bandみたいに、ロックンロール好きなら大抵の人は知ってる。

残念ながら僕は知りませんでした。僕が知ってるのは、主にAcid Mothers TempleBoredomsです。

幾何学模様:Boredomsは80年代後半にノイズバンドとして結成されました。80年代の日本はノイズ戦争の様相を呈していて、誰でも何かもっとクレイジーなことをやれる時代だったんです。Boredomsは大阪出身ですが、大阪は音楽的により極端なんですよ。東京はちょっとお高く留まってる感じ。だからBoredoms以前にはハナタラシのようなクレイジーなバンドがたくさんいたんです。観客にウンコを投げたり、ブルドーザーでライブハウスに来て破壊したり、酒樽を壊して投げたり、クレイジーなやつを誰でもいいから殴りつけたり、放火したり(笑)。小便にゲロ…そういった類の強烈さ。ハナタラシは日本のエクスペリメンタルやノイズのはじまりですよね。








今、皆さんはご自身のレーベルを運営されてるんですよね。日本でそれをやるのって大変なことなんですか?政府から補助金を受けたりしているの?

幾何学模様:いえ、自分達の資金でやっています。Guruguru Brainって名前のレーベルなんですが、東京でいくつかライブをやってみてから設立しました。日本では、通常ライブハウス側に「ウチでイベントやりたいの?ライブのブッキングしたいの」って言われる感じなんですが、それは日本にプロモーターがいないからなんです。日本にはそういったシステムがなくて、プロモーターが存在しないんです。プロモーターのシステムは、メジャーなアーティストだけのものなんですよ。だから普通バンド自身がオーガナイザーになる訳ですが、週末のイベントをやるのに1,500ドル位かかるんです。キャパ100名の小さなハコでもそうです。だから「そんなのアリかよ」って思って他を探すようになりました。タダでライブできるバーとかハコとか何でも。それで東京中50ヵ所以上に電話をかけまくって、とある場所を見つけたんです。“ライブバー”みたいな所で小っちゃくて機材もボロかったんですが、無料でライブさせてくれたんです。そこで毎月サイケデリック・ライブを開催するようになって、今のようなシーンを創り出そうとしていました。

東京近辺だとフツーの地元のバンドのライブでもチケットは2,000円位します。それにワンドリンクプラスして2,500円。高過ぎでしょう。で、ワンドリンクも600円とか700円とかする。東京でも日本国内でも、一度もライブに行ったことがない人がたくさんいるんです。「人生で一度もライブに行ったことがない」っていうのは高過ぎるからなんですよ。だからアンダーグラウンドなままなんです。

そこで、これを変えたいと考えるようになりました。もっとライブに行きやすいようにしたいと。でもそうするには、ライブハウスのシステム全体を変える必要がありました。ライブハウス側が全ての機材やサウンドエンジニアを握ってるわけですから。だからライブハウス側が支払いを要求できるんです。バンドに金を請求できるからプロモーションにも全く関心がない。バンドから金を巻き上げればいいわけですから。で、ライブに来るのはバンドの友達しかいなくて、3人とか(笑)。大体来てるやつもバンドをやってて、友達3人か4人だけ。そうじゃなかったらカノジョ。ショボ過ぎますよね。

キャパ60名位のハコで500円のイベントをブッキングすることから始めました。クールなポスターを制作して日本のバンドをたくさん発掘できたので、「OK、レーベルやろうぜ」ってなってコンピレーションアルバムを制作したんです。無料のコンピレーションです。そしたらアメリカやヨーロッパから寄付がたくさん集まりました。無料だというのに、たくさんの人たちがBandcampで10ドルとか20ドル寄付してくれたんです。そこで僕らは「これはポテンシャルあるな」と考えるようになりました。

アメリカ人の多くが、日本の、あるいはアジアの音楽シーンがどんなものか知りたがっていますが、彼らには分からないわけです。BorisMonoやAcid Mothers Templeは知っていてもそれだけなんです。だからアジアのバンドを欧米のマーケットに売り込むのをアシストしたいと考えるようになりました。それが僕らのレーベルの始まりです。

幾何学模様のレコード以外で何バンド位リリースしたんですか?

幾何学模様:13枚か14枚リリースしましたが、バンドとしては6バンドか7バンドですね。日本中のバンドをリリースしましたし、韓国や台湾のバンドもリリースしました。台湾は2バンド。インドネシア、パキスタン。タイやベトナムも。

大体がサイケデリック?

幾何学模様:そうでもないです。サイケデリックもちょっといますが、ドローン、エクスペリメンタル、フォーク、ドゥーム、スペースロックやエレクトロニックも。ジャンルにはあまりこだわってなくて地域に重点を置いています。お客さんはアメリカやヨーロッパ在住がほとんどですね。

最近まで流通をやってくれる人がいなくて、以前はメールオーダーのみでやっていました。500枚とかプレスしたらあっと言う間に売り切れました。

そうでしょうね。幾何学模様のレコードはDiscogsに上がりまくっててヨーロッパの変わった国に存在してますよね。

幾何学模様:(笑)そうそう。ギリシャとかイタリアとか。

東欧の国々とか。

幾何学模様:セルビアにイスラエル。5枚とか6枚オーダーしてDiscogsで売ろうとする人もいる。

幾何学模様があの位の数でリリースするのって、金銭的にあの位なら出せるからですか?それとも意図的に限定的なものにしているの?

幾何学模様:僕らとしてはソールドアウトにしたいっていうのがまずあります。それに資金的なサポートがないっていうのもあります。工場がヨーロッパにあって日本まで送らなきゃならないから本当に高くつくんです。それでまた(アメリカやヨーロッパの注文先に)送り返すというね。だから流通をやってくれる業者を探すまでは本当にやってる意味がなかったんです。今は工場からアメリカの業者に送るだけでよくなりましたが、メールオーダーもまだやっています。


インタビューに答えているゴウ・クロサワ氏(中央) Photo by SUB-LATION.



レーベル以外の仕事もやられてるんですか?

幾何学模様:僕はレーベルとバンドしかやっていません。でもトモと他の2人はフリーランスで翻訳やアートディレクションをやっています。そういう仕事ならツアー中や移動中でもできますから。だからダウドはいつもコンピューターを持参していますし、ガイはリハーサルスタジオで仕事してます。

東京のスタジオの状況はどんな感じなんですか?たくさんあるの?

幾何学模様:たくさんありますね。渋谷だとたぶん20軒位。機材がすべて揃ってて時間制で借りられるからとてもいいんです。PAまでいて、やりたければそこでレコーディングだってできちゃいます。ギター、ベース、エフェクター、マイクも借りられて必要なものは何でも揃っています。

僕の妻が言ってたんですが、彼女の学生の中に前回の幾何学模様のアメリカツアーを3回観に行った学生がいたらしいんです。多くの人からそのような熱い反応があったのでしょうか?

幾何学模様:そうですね、中にはマニアックなファンもいます。ギリシャはクレイジーで年配のレコードコレクターの人がたくさん来ました…(笑)。英国の観客は年齢層高めですね。年配のサイケ信者。アメリカの観客はもっと若めです。アメリカはロックンロールの国ですよね。僕はそう理解しました。アメリカに住んでた時には分かりませんでしたが、ヨーロッパを周ってからアメリカに戻ると、ロックンロールのヴァイブスがあるのを感じるんです。

日本の観客からの反応はどんな感じなんですか?

幾何学模様:日本ではほぼ2年間ライブをしてなかったんです。2年前Moon Duoと対バンして、それっきりでした。それ以降、海外ばかりでやり続けてましたから。今ちょうど日本ツアーが終わったところなんですが、お客さんが来てくれるか分からなかったので結構ヒヤヒヤしていました。結局、客入りはとても良くて東京の観客は300人ほどでした。皆さんエキサイティングだったし、僕らは長いジャムセッションをやりました。





今でも日本での僕らの知名度は低くてレコードも売ってないんです。下北沢にJet Set Recordsっていうのがあるのですが面白かったんですよ。僕らがコンタクトしても返信がなかったのに、ウェブサイトを見たらアメリカからの僕らの輸入盤が売られてたんです。

もっと日本でライブをやりたいとは思うのですが、あまりたくさんやりたいという訳でもないですね。東京、ロンドン、ニューヨークみたいな大都市をグローバルな視点で見てみると、ロンドンで1年に2回ライブするとして、東京がベースだってだけでここで7回やらないといけないってことにはならないですよね。

東京だとどんな場所でライブしてるんですか?

幾何学模様:渋谷O-NESTです。ここから近いですね。2階建てになってて、上階がレストラン併設のバーエリアでDJもあって、下の階がライブ会場になっています。

東京で気に入ってるバンドは何かありますか?

幾何学模様:僕らはMinami Deutschってバンドと一緒に住んでます。「南ドイツ」って意味でクラウトロックのバンドです。1枚目のアルバムではモトリックだけ演っていました。ニュービートですね。去年1度ヨーロッパでツアーをやったんですが、もう1度やる予定なのでチェックしてみて下さいね。

そのバンドも君達のレーベル所属なんですか?

幾何学模様:
はい、僕らもMinami Deutschの曲をリリースしていますが、ヨーロッパのレーベルからもCDが出ています。

彼らのレコードもソールドアウトしているの?

幾何学模様:はい、でもリイシューする予定です。

他には?

幾何学模様:Dhidalahですね。DhidalahもGuruguru Brain所属でもっとヘビーでドゥーミーなスペースロックのバンドです。21分、1トラックみたいな。ウチから10インチをリリースしていますが、片面1トラックで2トラックのみです。




月にまたツアーされますよね?新曲は何か予定されてますか?

幾何学模様:はい、EPをリリースします。アメリカツアー前の4月末に発売予定です。去年プラハでスタジオに入る時間が2日あったので、2日間通ってジャムセッションしました。まだよく聴いてないのですが、その時の全トラックをプロデュースやミキシングをお願いしている友人の一人に託しました。彼は「OK、この2日間のトラックだけ使って全部作るよ」って言ってくれて、それぞれ違うトラックを使って曲にまとめてくれたんです。エクスペリメンタルですが、もっとヘビーなものに仕上がっています。やってみたかったんですよ、バンドを結成した頃って、あるのはエネルギーだけじゃないですか。細かいこととか気にしてなくて何も分かっちゃない。このEPでは、再びそういうエネルギーを生み出してみたかったんです。だからもっと生っぽいサウンドに仕上がっていると思います。

幾何学模様がたくさんってことですね?

幾何学模様:そのとおり。

20 November 2017

幾何学模様(Kikagaku Moyo)| The Japan Timesインタビュー



【元ネタ英語記事】 Psych-rock act Kikagaku Moyo makes a virtue of DIY and keeping it ‘sloppy’ (2017年10月17日)The Japan Times

以下、当サイトによる翻訳


彼らの2017年度ツアー日程を見てみると、幾何学模様が日本人のバンドであることは容易く忘れてしまうだろう。サイケデリックロック5人組である幾何学模様は、今年の前半、北アメリカでのライブ26本達成後、最近ほぼ50日間に渡るヨーロッパツアーの第2レグを完遂させた。それに較べると来月の日本ツアー5日間はちょっと駆け足ではある。

幾何学模様は厳選された日本人アクトのひとつとされており、バンドの自国より海外でかなり多くのファンを率いている。Acid Mothers Templeの如く、未だ1973年であるかのようにエネルギッシュにプレイする長髪の日本人グループに対し、海外から確固たる需要が存在することを幾何学模様(バンド名の訳は「geometric patterns」)は発見済みだ。しかしながらバンドのドラマーであり事実上のスポークスマンであるGo Kurosawaは、”異国からのアウトサイダー”と見られれるのは避けたいと強調する。

「それだと、もっと“日本的なもの”になってしまう。僕らはそっちのカテゴリーには入りたくなかった。本当の意味でシーンに巻き込まれたかったんです」。

彼は本気で言っているのだ。渋谷区のカフェで会った時、Kurosawaは、ギタリスト兼ヴォーカリストであるTomo Katsuradaと共にアムステルダムへ移住する直前だった。他のバンドメンバー  ーリードギタリストDaoud Popal(当インタビューの一部に参加)、ベーシストKotsu Guy、シタールプレーヤーでGoの弟であるRyu Kurosawa - は東京に残る予定だ。

「5年間、音楽をやりながらサラリーマンみたいに働いていましたが、何か行き詰っまってしまったんです」。Kurosawaは東京での生活についてそう語る。「クールな場所でまぁ快適ではあるんですが、安全地帯から抜け出してみたかったんですよね」。

2012年結成後、幾何学模様は高円寺や高田馬場でストリートパフォーマンスをしながら、またリハーサルスタジオでの深夜のセッションや片田舎の保養地で、そのヘビーで即興的なサイケデリアを研ぎ澄まし、ゆったりと何に縛られることもなく進化していった。Ryuこそインドでシタールの教祖Pandit Manilal Nagに師事していたものの、音楽的熟練は彼らにとってそれほど大切なものではなかった。彼らは技術者というよりはむしろ探究者だったのだ。

「テキトーな感じのバンドが好きなんですよ」。Kurosawaは語る。「だからサイケデリックロックが好きなんです。下手クソでも良いバンドだったりしますから」。

東京のライブシーンがどんな風に回っているのか、メンバーの中に十分な経験がある者はいなかった。また彼らにとってその最初の経験は、嫌な現実を突きつけられるものだった。Kurosawaは従来型のライブハウスでの初期のライブについてこう振り返る。「ライブ後、ハコの人が『ああ、すごく良かったよ。じゃ3万円ね』みたいな感じで。僕らが『マジかよ!』ってなったら、あっちは『金払わなきゃダメだ』って」。

このように演奏するために支払いをするシステムは、日本でノルマとして知られており、多くの若いミュージシャンを”ライブハウス”界隈から遠ざける結果となっている。代わりにあまり経費のかからない格安の会場でライブを企画するか、リハーサルスタジオでやることさえある。2013年から2014年にかけて、幾何学模様は金に厳しいミュージシャンの行きつけである渋谷のRuby Roomで東京サイケフェスを主催していた。ショーは安価で日本語と英語でプロモーションしたものの、バンドとしてもっと勢いをつけたいともがいていた。

「行き詰まりを感じていましたね」。Kurosawaは語る。「インパクトを与えるには小さ過ぎたしアンダーグラウンド過ぎたんです」。

また、東京でアンダーグラウンドなロッカーでいることが、最もセクシーな職業だとも思えなかった。

「普通の女の子に『あ、僕バンドにいるんだ』って言ったら大体は『OK、じゃあアナタとはデートしたくない』みたいな感じ」だとKurosawaは語る。「東京じゃお笑い芸人の方がミュージシャンよりカッコいいんです」。

「ガールフレンドがいてその子をライブハウスに連れていくと、大体いいデートスポットとは言えない」。Popalは言う。「狭過ぎるし煙た過ぎるしステージ以外何も見えない。ちょっと退屈なんです。会話する場所もないしね」。

日本の音楽シーンの制約に苛立っているうちに、幾何学模様はすぐに国境を超えたファンを獲得していった。バンド名を冠したデビューアルバム - 最初はBandcamp経由で 、その後アナログ盤としてギリシャのレーベルCosmic Eye Recordsからリリース - は、2013年2週間に渡るオーストラリアツアーへの道を開いた。その翌年、バンドは最初のUSツアーに乗り出し、有名なオースティンサイケフェスへの出演を果たした。

Kurosawaは、バンド自らの手によってUSツアーをいかに企画したか解説してくれた。ライブ手配のため様々なバンドに直接コンタクトを取り、ヴァンをレンタルし、機材を購入、そしてまたリセールし、時には出演料の交渉の為、偽の”マネージャー”のフリをしたことさえあったという。

「日本のバンドの多くは『僕らの仕事は音楽をプレイすること』って思ってるんです」。彼は語る。「DIYがクールだって考えてるヤツなんていない。大きなレーベルと契約することだけがゴールなんです」。

彼はこのことを、彼自身が海外で出会ったもっとビジネスに精通したインディーズミュージシャン達と比較する。幾何学模様が真似ているのはそのような人々のやり方である(Kurosawaが少しの間レーベルを手伝っていた日本人バンドBorisの例に従い、今や幾何学模様はアンプや機材をヨーロッパと北アメリカに所持しており、ツアーの主だった出費の一部を削減している)。

幾何学模様は自身のレーベルGuruguru Brainから音源をリリースする傍ら、海外のレーベルにもアルバムをライセンシングし、コレクターのためのアナログ盤やカセットテープをリリースしている(美しくもドローンな2014年のEP<Mammatus Clouds>からスタートするのが良いだろう)。

Guruguru Brainはアジアの様々なアーティストによる音源もリリースしており、台湾のドローンデュオScattered Purgatory(破地獄)、パキスタンのサウンド制作者Nawksh、ベトナムのアシッドフォークシンガーJ. William Parker等がいる。KurosawaとKatsuradaは新しいベースとなるアムステルダムをこうのようなアーティストのヨーロッパツアーを実現させるために利用しようと考えている。

「Guruguru Brain所属の全バンドが西洋のロックカルチャーに貢献出来ると考えています」。レーベルの運営には関わっていないものの、Popalはそう語る。「彼らは自分達だけの何かを持っているんですが、それは現在のインディーロックシーンには存在しないものです」。

「アメリカのインディーバンドとそっくりなサウンドのバンドなら日本にたくさんいるんです」。Kurosawaは言う。「でもそれじゃ聴く意味ないでしょう。しかも英語で歌ってるし…」。

「ただ見た目が違うだけだよね」。Popalが口を挟む。

「タイのバンドを探してた時、Mac DeMarcoみたいなサウンドのバンドがいっぱいいたんです」。Kurosawaは続ける。「英語も上手いんだけど、でもだから何?タイ語で歌えよ!ってね」。