20 November 2017

幾何学模様(Kikagaku Moyo)| The Japan Timesインタビュー



【元ネタ英語記事】 Psych-rock act Kikagaku Moyo makes a virtue of DIY and keeping it ‘sloppy’ (2017年10月17日)The Japan Times

以下、当サイトによる翻訳


彼らの2017年度ツアー日程を見てみると、幾何学模様が日本人のバンドであることは容易く忘れてしまうだろう。サイケデリックロック5人組である幾何学模様は、今年の前半、北アメリカでのライブ26本達成後、最近ほぼ50日間に渡るヨーロッパツアーの第2レグを完遂させた。それに較べると来月の日本ツアー5日間はちょっと駆け足ではある。

幾何学模様は厳選された日本人アクトのひとつとされており、バンドの自国より海外でかなり多くのファンを率いている。Acid Mothers Templeの如く、未だ1973年であるかのようにエネルギッシュにプレイする長髪の日本人グループに対し、海外から確固たる需要が存在することを幾何学模様(バンド名の訳は「geometric patterns」)は発見済みだ。しかしながらバンドのドラマーであり事実上のスポークスマンであるGo Kurosawaは、”異国からのアウトサイダー”と見られれるのは避けたいと強調する。

「それだと、もっと“日本的なもの”になってしまう。僕らはそっちのカテゴリーには入りたくなかった。本当の意味でシーンに巻き込まれたかったんです」。

彼は本気で言っているのだ。渋谷区のカフェで会った時、Kurosawaは、ギタリスト兼ヴォーカリストであるTomo Katsuradaと共にアムステルダムへ移住する直前だった。他のバンドメンバー  ーリードギタリストDaoud Popal(当インタビューの一部に参加)、ベーシストKotsu Guy、シタールプレーヤーでGoの弟であるRyu Kurosawa - は東京に残る予定だ。

「5年間、音楽をやりながらサラリーマンみたいに働いていましたが、何か行き詰っまってしまったんです」。Kurosawaは東京での生活についてそう語る。「クールな場所でまぁ快適ではあるんですが、安全地帯から抜け出してみたかったんですよね」。

2012年結成後、幾何学模様は高円寺や高田馬場でストリートパフォーマンスをしながら、またリハーサルスタジオでの深夜のセッションや片田舎の保養地で、そのヘビーで即興的なサイケデリアを研ぎ澄まし、ゆったりと何に縛られることもなく進化していった。Ryuこそインドでシタールの教祖Pandit Manilal Nagに師事していたものの、音楽的熟練は彼らにとってそれほど大切なものではなかった。彼らは技術者というよりはむしろ探究者だったのだ。

「テキトーな感じのバンドが好きなんですよ」。Kurosawaは語る。「だからサイケデリックロックが好きなんです。下手クソでも良いバンドだったりしますから」。

東京のライブシーンがどんな風に回っているのか、メンバーの中に十分な経験がある者はいなかった。また彼らにとってその最初の経験は、嫌な現実を突きつけられるものだった。Kurosawaは従来型のライブハウスでの初期のライブについてこう振り返る。「ライブ後、ハコの人が『ああ、すごく良かったよ。じゃ3万円ね』みたいな感じで。僕らが『マジかよ!』ってなったら、あっちは『金払わなきゃダメだ』って」。

このように演奏するために支払いをするシステムは、日本でノルマとして知られており、多くの若いミュージシャンを”ライブハウス”界隈から遠ざける結果となっている。代わりにあまり経費のかからない格安の会場でライブを企画するか、リハーサルスタジオでやることさえある。2013年から2014年にかけて、幾何学模様は金に厳しいミュージシャンの行きつけである渋谷のRuby Roomで東京サイケフェスを主催していた。ショーは安価で日本語と英語でプロモーションしたものの、バンドとしてもっと勢いをつけたいともがいていた。

「行き詰まりを感じていましたね」。Kurosawaは語る。「インパクトを与えるには小さ過ぎたしアンダーグラウンド過ぎたんです」。

また、東京でアンダーグラウンドなロッカーでいることが、最もセクシーな職業だとも思えなかった。

「普通の女の子に『あ、僕バンドにいるんだ』って言ったら大体は『OK、じゃあアナタとはデートしたくない』みたいな感じ」だとKurosawaは語る。「東京じゃお笑い芸人の方がミュージシャンよりカッコいいんです」。

「ガールフレンドがいてその子をライブハウスに連れていくと、大体いいデートスポットとは言えない」。Popalは言う。「狭過ぎるし煙た過ぎるしステージ以外何も見えない。ちょっと退屈なんです。会話する場所もないしね」。

日本の音楽シーンの制約に苛立っているうちに、幾何学模様はすぐに国境を超えたファンを獲得していった。バンド名を冠したデビューアルバム - 最初はBandcamp経由で 、その後アナログ盤としてギリシャのレーベルCosmic Eye Recordsからリリース - は、2013年2週間に渡るオーストラリアツアーへの道を開いた。その翌年、バンドは最初のUSツアーに乗り出し、有名なオースティンサイケフェスへの出演を果たした。

Kurosawaは、バンド自らの手によってUSツアーをいかに企画したか解説してくれた。ライブ手配のため様々なバンドに直接コンタクトを取り、ヴァンをレンタルし、機材を購入、そしてまたリセールし、時には出演料の交渉の為、偽の”マネージャー”のフリをしたことさえあったという。

「日本のバンドの多くは『僕らの仕事は音楽をプレイすること』って思ってるんです」。彼は語る。「DIYがクールだって考えてるヤツなんていない。大きなレーベルと契約することだけがゴールなんです」。

彼はこのことを、彼自身が海外で出会ったもっとビジネスに精通したインディーズミュージシャン達と比較する。幾何学模様が真似ているのはそのような人々のやり方である(Kurosawaが少しの間レーベルを手伝っていた日本人バンドBorisの例に従い、今や幾何学模様はアンプや機材をヨーロッパと北アメリカに所持しており、ツアーの主だった出費の一部を削減している)。

幾何学模様は自身のレーベルGuruguru Brainから音源をリリースする傍ら、海外のレーベルにもアルバムをライセンシングし、コレクターのためのアナログ盤やカセットテープをリリースしている(美しくもドローンな2014年のEP<Mammatus Clouds>からスタートするのが良いだろう)。

Guruguru Brainはアジアの様々なアーティストによる音源もリリースしており、台湾のドローンデュオScattered Purgatory(破地獄)、パキスタンのサウンド制作者Nawksh、ベトナムのアシッドフォークシンガーJ. William Parker等がいる。KurosawaとKatsuradaは新しいベースとなるアムステルダムをこうのようなアーティストのヨーロッパツアーを実現させるために利用しようと考えている。

「Guruguru Brain所属の全バンドが西洋のロックカルチャーに貢献出来ると考えています」。レーベルの運営には関わっていないものの、Popalはそう語る。「彼らは自分達だけの何かを持っているんですが、それは現在のインディーロックシーンには存在しないものです」。

「アメリカのインディーバンドとそっくりなサウンドのバンドなら日本にたくさんいるんです」。Kurosawaは言う。「でもそれじゃ聴く意味ないでしょう。しかも英語で歌ってるし…」。

「ただ見た目が違うだけだよね」。Popalが口を挟む。

「タイのバンドを探してた時、Mac DeMarcoみたいなサウンドのバンドがいっぱいいたんです」。Kurosawaは続ける。「英語も上手いんだけど、でもだから何?タイ語で歌えよ!ってね」。