19 September 2024

Tramhaus(トラムハウス) | Micha Zaatインタビュー


ロッテルダムのポストパンクバンド・Tramhaus(トラムハウス)のデビューアルバム「The First Exit」がついに9月20日リリースされる。直近ではBBC Radio 6 MusicのSteve Lamacq(スティーヴ・ラマック)、Radio XのJohn Kennedy(ジョン・ケネディー)の番組で「Ffleur Hari」がオンエア、既にUKメディア・The Quitusにインタビュー記事(4月23日)が掲載される等、国外での滑り出しも上々だ。

新人ながら自国オランダやフランスで確固たるファンダムを誇る彼らは、10月から欧州&UKアルバムリリースツアーに出発するが、当然次に狙うのは(日本を含む!)世界進出となるだろう。その際、最難関となり得るのがアメリカツアーだ。ご存じの通り、バンドがアメリカツアーするのに必要なPー1Bビザの申請費用は2024年4月1日から爆上がりしており、「国際的に認められたグループ」であることを示す書類等の提出も必要になる。Tramhausの場合、ESNS 2024(Eurosonicフェスティバル)のMME(Music Moves Europe)アワードのオランダ代表にノミネートされた経歴が大きいとは思うが、やはり英語圏での高評価の証しも欲しいところ…。

そこで「持ってる男」ギタリスト・Micha(ミシャ)の登場である。彼は「ある特別な裏技(?)」でアメリカに行くことなくシアトルの有名ラジオ局KEXPのDJ・Kevin Cole(ケビン・コール)とコネクションを作ったのである。詳しい話はMichaが(たぶんメールで)回答した下記インタビューを読んでほしいのだが、非英語圏のニューカマーにとってKEXPで2度もオンエアしてもらえたことは大きな意味を持つはずだ。

ファンとしては近い将来、Kevin ColeのホストでTramhausがKEXPでプレイする姿を見てみたい。同郷のIguana Death Cult(イグアナ・デス・カルト)先輩が昨年USツアーに絡めてKEXPライブに出演済みだから、きっとTramhausも!…と思いたいが、実はイグアナ先輩はアメリカのレーベル所属なのである。

来日直前日本語インタビューで、海外に軸足を移す方策を取る同胞にほろ苦い気持ちを覚えつつ「地元ロッテルダムのシーンにもっと誇りを持ちたい」と語っていたTramhaus。世界を狙えるポジションに位置する彼らの今後の展開から目が離せない。

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【元ネタ記事】Start Listening To: Tramhaus (Still Listening 2024年5月28日)


以下、当ブログによる翻訳(インタビュー回答者:Micha(Gt.))


Tramhausの音楽をよく知らない人に、バンドが誰で、どこ出身で、どんな音楽をやっているのか教えてもらえますか?

僕らはロッテルダム出身の5人組インディーロック/ポストパンク/ノイズロックのバンドで、名前はLukas(ルカス/Vo.)、Nadya(ナジャ/Gt.)、Julia(ジュリア/Ba.)、Jim(ジム/Drs.)、Micha(ミシャ/Gt.)。激しいけど踊れる曲、暴れて爆発してるみたいだけど、いろんな形の愛や人生を祝福する音楽を作ってる。メンバーは皆んなそれぞれ、ちょっと違ったジャンルを聴いてるから、バンドのサウンド的には結構振れ幅があるかも。

デビューアルバム「The First Exit」のリリース、おめでとうございます!アルバムのタイトルに込められたインスピレーション、バンドにとってそれが何を意味するか教えてもらえますか?

Lukas(Vo.)がこのタイトルを思いついたんだけど、数年前、彼がゲイだとカミングアウトしたことを言ってるんだ。リリック的には、それがアルバム全体のテーマになってる(※別インタビューでLukasは「ストレートの世界でゲイとして育った若者のことを歌っている。意図的ではなかったが書き始めたらそうなった」と語っている)。僕にとってサウンド的には、閉塞感とか、常に一番近い出口はどこか探してるようなちょっと不安で落ち着かない感じを意味していて、その感覚をギタープレイに取り込むようにした。緊張と解放みたいなね。

ニューシングル「Once Again」はKEXPで初公開されました。あんな有名なプラットフォームで曲が紹介されるのってどんな感じでしたか?

この話にはちょっとした前フリがあって、1年くらい前にアゾレス諸島(※ポルトガル領。大西洋に浮かぶ9つの島で構成され、フェスは最大のサンミゲル島で開催)のTremor(トレモア)フェスティバルに出演(※2023年3月29日)したんだけど、ホテルがサウナ付きで僕とサウンドテックのElmo(エルモ)で朝、行ってみることにしたんだ。そしたらKEXPのKevin Cole(ケビン・コール)も同じことを考えてたみたいで、蒸し暑いサウナの中で結構長く話をすることになったんだ。僕らのファンだと言ってくれたんだけど、サウナでのランデブーの後、KEXPでもっとオンエアするって約束してくれた。そう、だからKEXPでのプレミア公開はとても有難いし光栄に思ってる。サウナがあってマジ感謝だね。


【補足】 

2023年3月29日+ サウナでKevin Coleと偶然知り合う

2023年4月19日 "Make It Happen"がKEXPのSong of the Day

2024年5月24日 "Once Again"がKevin DJのKEXP「Drive Time」でオンエア

「Song of the Day」に選ばれた際の地元ロッテルダムのメディア記事によると、Kevin Coleはライブ会場が混雑し過ぎていてTramhausのステージを見逃していたが、その後サウナでMichaと遭遇。最初Michaは彼と気付かず話していたとのこと(Lukas談)。なお、Kevin ColeはTramhausがノミネートされた2024年MME(Music Moves Europe)アワードの審査員としても名を連ねていた。

Source: Open Rotterdam (2023年4月19日) 

 

「Once Again」のMVは、ロックダウン中のタイトルもないYouTube動画がランダムに使われているユニークなものでした。このコンセプトの着想はどこから?

このアイディアは、以前から何度も組んでるビデオアーティスト、Peter Marcus(ピーター・マーカス)(※「I Don't Sweat」「The Goat」「Minus Twenty」のMVも担当)の閃きから生まれたものなんだ。このミュージックビデオは、僕らが生きるデジタル時代の不条理を物語ってる。何でもかんでもキャプチャされ、何百万もの知らない人達に見られる可能性がある時代。このアイディアに僕らはすごく魅かれた。このMV自体に特に美的な価値やリアルな物語性はないから、映像から何を生み出すかは全部視聴者任せ。その辺にあるものを何でも使って自分だけのストーリーをクリエイトする、その人の生まれ持った才能にかかってるってわけ。




「The First Exit」のトラックリストのタイトルには「Semiotics」や「Ffleur Hari」のように面白いものがあります。これらの曲にまつわるテーマやストーリーについて少し教えてもらえますか?

えっと、「Fleurr Hari」っていうのはLukasが急ぎで曲の構成を書いてた時に浮かんだ実在しない言葉で、メンバーが気に入ってそのまま使うことにした。有名なボクシングのチャンピオン、Badr Hari(バダ・ハリ ※オランダ出身のキックボクサー)の親戚のことかもしれないし、そうじゃないかもしれない。「Semiotics(※記号論)」はLukasの性的な逸脱についての曲だから、それは置いておくことにしよう。





ヨーロッパ、日本、アメリカと世界中をツアーしてますよね。ツアーでの忘れられないエピソードは何かありますか?

沢山あるな…。日本は本当に何か違ってて他のどの観客とも比べものにならない。日本の人って曲を気に入ってくれたら、ホント大好きになってくれる。で、僕らの方も大好きになっちゃった。あの国で経験したホスピタリティーとか謙虚さとか…。ここ数ヶ月ツアーが集中してたけど、おかげで家族のように成長できたかな。

SXSW(アメリカ)、Best Kept Secret(オランダ)、Sziget Festival(シゲト・フェスティバル/ハンガリー)等メジャーな音楽フェスに出演されてますよね。これまでで最も印象に残っているフェスは何ですか?

ヨーロッパのいろんな大規模フェスに出演するのは、知り合いのミュージシャン達と楽屋(かなりゴージャスな場合が多い)で再会できるのが嬉しいよね。数ヶ月の海外ツアーを終えて里帰りするみたいな気分。ずっとバンドメンバーとしか過ごしてなかったわけだから。「また1年生き延びられた、共に祝おうぜ」みたいな。

次回のツアーは28公演10ヶ国だそうですが、大体的なツアーに向けてどんな準備をするのでしょう?最も楽しみなことは何ですか?

あらかじめ十分な数の下着を買っておくこと。一番楽しみにしてるのは、自分が今やってるのが本当に特別なことだと実感する、ふとした瞬間を味わうこと。

2021年の結成以来、シングル数枚とEP1枚をリリースされています。初期のリリースから今度のデビューアルバムまで、バンドはどのように進化してきましたか?

ロックダウンの最中にバンドを始めた頃は、単に退屈してて怒りのパンク音楽を作りたかっただけだけど、バンドはもっと内省的で物事を深く考えるスタイルに移行してきてる。相変わらずサウンドは威嚇的で危険だけど、それだけじゃなく、より考え抜かれた音になってる。バンドとしてはもうちょっと実験してみたいかな。自分達とバンドの限界を試してみたい。

今、気に入ってるのは何ですか?

ケンドリック・ラマ―とドレイクのビーフ(※対立・抗争)。

今、嫌いなのは?

ケンドリック・ラマ―とドレイクのビーフ。

子供の頃から聴いてるアルバムを1枚挙げて、それが今も大切な理由を教えて下さい。

The Strokes(ザ・ストロークス)の「Is This It」。10才位の時、CDをゲットして何週間も聴くのを止められなかった。今でもヤラれてるよ。シンプルで真っすぐなところが良くてアルバム全曲が最高。シンプルな時代を思い出させてくれる。

リスナーには「The First Exit」やTramhausの楽曲全般からどんなメッセージやフィーリングを受け取ってほしいですか?

たくさんのことを感じてほしい。何かその人の感情が搔き立てられるなら、どんな感情かはあまり気にしない。無感覚に消費される業界の製品を押し付けられる時代、僕らのアルバムが気に入ってもらえなかったとしても、その人に無表情でいられるより、その方が僕は納得できると思う。


Micha Zaat(右端)


Tramhaus

■ HP: https://tramhaus.com/

■ X(旧Twitter): https://twitter.com/TRAMHAUSrtm

■ Instagram: https://www.instagram.com/tramhaus.rtm

■ Bandcamp: https://tramhaus.bandcamp.com/