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1 July 2025

【祝再来日】Tramhaus(トラムハウス)日本に関する発言まとめ

 

Photo: Marc Elisabeth


ついにロッテルダムのポストパンクバンド・Tramhaus(トラムハウス)の2度目の来日ツアーが本日7月1日福岡からスタートする。今回はあのele-kingにLukas (Vo.)のインタビュー記事が掲載され(!)、Tramhausの日本での知名度向上を願う自分としては嬉しい限りである。…というわけで、2023年11月初来日時の翻訳ボランティアをきっかけに彼らを追い続けてきた自分が読み溜めたTramhausのWeb記事の中から、取り急ぎ彼らの日本に関する発言をキュレーションしてみることにする。


■ 夢は日本でのライブ

まず前回の初来日時の主催・村田タケル氏によるインタビューで、ヴォーカルのLukasは「1年前のインタビューでバンド最大の夢は日本でプレイすることと答えた」と発言していた。そのインタビューがロックダウン中のこれである。


Lukas: 僕らは本当に日本に行きたいと思ってる。とにかくツアーに出たくて、もちろん今は無理だけど、日本は(行きたいツアー先)リストの上位にある。

Source: Heet zonder zweet: de Rotterdamse postpunkers van Tramhaus (Effenaar 2022年1月26日)

■ 日本語が話せるメンバー・Jim(Drs)

そんな彼らの夢が、デビューアルバム発売を待たず早々に実現したのは、2023年11月Dutch Music Export主催のライブ・ショーケースイベントに招聘されたのが大きかったと思う。彼らの自国オランダでの人気もさることながら、Jimの流暢な日本語力が招聘の決め手のひとつになったであろうことは想像に難くない。

実際、各国インタビュー記事のJim発言では村上春樹細野晴臣の名前が挙がる等、かなりの日本通のようである(邦楽に関しては主催の村田タケル氏より詳しいらしい)。自分は前回の来日ライブ最終日、下北沢Basement Barの前で本番用レモンサワーの買出しから帰ってきたJimと鉢合わせたのだが、顔を見て咄嗟に英語で会話した後、「てゆ~か、日本語話せるんですよね?」と話しかけたら、返ってきたJimの日本語力は本当に素晴らしいものだった(このことは自国オランダでもっと知られるべき!)。実は日本育ち…的な答えを期待しながら「何でそんなに日本語上手なの?」と質問してみたら、日本育ちのドイツ人からプライベートレッスンを受けているそうである。

Julia: ドラマーのJimは日本の大ファンで、毎年日本に行って1ヶ月くらいステイしてる。日本語のほぼバイリンガルで2時間抜けてカフェでレッスンを受けたりしてる。

Source: [INTERVIEW] Tramhaus aux portes du succès (Listenup! 2023年11月22日)

■ 一度ファンになったらとことん応援する日本人ファン

今やTramhaus研究家(?)みたいになってしまった自分にとって、ギタリスト・Michaはバンドの中で少し異色な存在である。オランダが誇るサキソフォーンプレーヤー・Benjamin Hermanのアルバムへの参加(なんと彼の苗字である「Zaat」という曲もある!)、共著ではあるがロッテルダムのライブ会場の歴史に関する本の執筆Webメディアへの寄稿等、吉本興業で言えば、又吉的な立ち位置にいると思っている(*万一、英語に自動翻訳された場合に備え補足しておくと、日本のお笑い芸人のエージェント・吉本興業に所属する又吉直樹とは、小説家でもあり、2015年名誉ある芥川賞を受賞)。有名大学卒で歴史や哲学を勉強していたが、今はポストパンクバンドのギタリストとして世界中をツアー中、という異色な経歴の持ち主である。

そんなMichaは折に触れて、日本のファンについて言及してくれるのだが、ツアーでの忘れ難いエピソードについて聞かれた際の答えがこちら(他にも課金は必要だが、オランダ語記事の見出し:日本にも熱狂的ファン「ファンになったら日本人はとことんファンになる」)。


Micha: 日本は本当に何か違っていて、他のどの国の観客とも比べ物にならない。日本の人って音楽を気に入ってくれたら、本当に大好きになってくれる。あの国で経験したホスピタリティーとか謙虚さとか、僕らの方も大好きになっちゃった。

Source: Start Listening To: Tramhaus (Still Listening 2024年5月28日)



Photo: Marc Elisabeth


■ ライブでの日本の観客の反応

個人的に最も興味深かったのは、2024年4月のThe Quietusの英語記事だった。翻訳してブログ記事にしたかったが、あのMichaが「もうこのインタビュアー以外の取材は受けたくない」とインスタで言っていたように、哲学の知識がないと訳しきれない部分が多々あり断念した経緯がある。

この英語記事によると、彼らは初めて訪れた未開の地である日本を「とてもクレイジー」で「細部にこだわる」場所だと感じたようだ(それでもSXSWで訪れたアメリカほどは異質に感じなかった…との記述もあり具体的に訊いてみたい気もする)。


Lukas: すっごく面白いと思ったのは、日本のお客さんってどうリアクションすればいいかこっちに教えてもらいたがるってこと。あるレビューで誰かが「どう振舞えばいいか知りたかったけど、どう振舞おうが関係ないって分かった」みたいなことを書いてた。日本に行って気付いたんだけど、僕がこう(動いてみせる)したら、お客さんが皆んな同じように動いてくれる。めっちゃ覚えるのが早いんだ。だから次のライブでは、よし!これを利用してやろうって思ったよ。

Jim: 日本のお笑い芸人は全員大阪出身。大阪でのライブでは皆んながシンガロングしてくれた。東京のライブはそうでもなかったけど。

Julia: ウチらがやることをマネして(ここでの)ルールは何なのか探ってる感じだった。

Jim: この曲でモッシュピットが見たいって言えば、たぶんやってくれると思うよ。

Source: One Direction: An Interview With Tramhaus (Quietus 2024年4月23日)


この辺りのコメントは初来日した海外アーティストにほぼ共通している気もする。ちなみにお馴染みの「曲間のシーン(静寂)」については特に何も言及がなかった。


■ ギタリストNadyaについて

…とここまで爆速で書いて、Tramhaus結成の張本人・Nadya姐さんが登場していないことに気付いてしまった!前回の来日時、一番長く話ができたメンバーがギタリストのNadyaだったが、それは初来日インタビュー翻訳の為の鬼リサーチで浮かんだ疑問点への答え合わせがしたかったから。

Tramhaus結成前、NadyaはJazz歌手だった少し年上のルームメートの女性とVulva(女性器の外陰部を示す学術用語)というユニットを組んでいて、ジャンルは何と書くのが正しいか質問したところ、Sludge(スラッジ)だと教えてくれた(その手の音楽に無知な自分の為にSpotifyでMelvinsの「Houdini(1993年)」を例として見せてくれた)。どちらかと言うとTramhausではボーイッシュなイメージのあるNadyaであるが、女性の中絶の権利を主張するポリティカルなユニット・Vulvaではフェミニン全開なヴィジュアルでドラムを叩く姿がとてもクールである。赤ん坊の人形を燃やし物議を醸したVulvaのミュージックビデオ「Kill The Baby」(2023年オランダ映画祭ノミネート作品)を見れば、Tramhausでの彼女のサウンド面での役割や影響力をより深く理解できるのではと思う。


最後になりましたが、フジロック出演圏内に入りつつあるTramhausを今回の来日で見届けることが出来れば、近い将来「あ、俺、福岡/大阪で見たし」と自慢できる"I was there"案件になるのはまず間違いないので、平日の労働後、疲れた身体を引きずってでも観に行くことをお勧めします。このブログをほぼ記憶だけで書けてしまうオタク全開な自分からのレコメンドです!(時間がないのであまり推敲できないままUPします)



TRAMHAUS JAPAN TOUR 2025

チケットは下記リンクから!

https://lit.link/tramhausJapantour2025

9 June 2025

Tramhaus(トラムハウス) | Julia & Jimインタビュー

Photo: Elmo Taihitu


ロッテルダムのインディーズシーンを牽引するTramhaus(トラムハウス)が日本に帰ってくる。前回の初来日から1年8ヶ月、今回はデビューアルバム「The First Exit」リリースツアーとして福岡(!)・大阪・東京の3公演となる。現在欧州ツアー真っ最中の彼らは、6月27日ベルギーのBear Rockフェスティバル出演後、休む暇もなく7月1日福岡から開始されるアジアツアーに臨む形となる。

なお、DIY精神にコミットするTramhausの来日ツアーを主催するのは、またもや個人、つまり元School in Londonの村田タケル氏である(初来日ツアーで奇跡の黒字化を達成!)。…というわけでいろんな意味でドキドキが止まらないまま、取り急ぎTramhaus最新インタビューを翻訳してみることにする。今回フランスのメディアのインタビューに答えているのは、メンバー内で1番ピアスの数が多いPUNKなベーシスト・Juliaと、流暢な日本語を話すドラマーのJim 。2人の自然体の受け答えから今現在のバンドのヴァイブスが伝わってくると思う。

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【元ネタ記事(フランス語)】INTERVIEW - Tramhaus (Goûte Mes Disques  2025年6月1日)


以下、当ブログによる翻訳(前文省略)


「The First Exit」のリリース後、インタビューの度にデビューアルバムのリリース日を聞かれなくなってホッとされたのではないでしょうか?

Jim: その質問をされなくなったのは良かったんだけど、すぐにセカンドアルバムがいつ出るか聞かれるようになっちゃった!

Julia: 少なくとも1年待って。

Jim: 今のところファンは充分満たされてるみたいだけどね。


「The First Exit」の評価が概ね良かったことで、期待に応えねばというストレスから解放されたと感じましたか?

Jim: あのアルバムには相当プレッシャーがあってめちゃビビってた。人それぞれ基準が違うから何を期待されてるのかも分からないし。プレスやファンからの反応がポジティブなのはバンドにとってとても良かった。ネガティブな反応を全く聞いたことがないとか、信じられないよね。

Julia: ホントほっとした!でも同時にセカンドアルバムにかなりプレッシャーがかかってる。


バンドが次にどうなるかかなり不安に思われてるってことですね。アーティストという存在は苦悩する運命にある?

Julia: そう、自分たちにはマゾの気質があると思う。

Jim: ちょうどこれから新曲を書き始めるところで、スゴくワクワクしてる。「The First Exit」のリリースは2024年の9月だけど、2023年の夏にはもう完成してたから、皆んなにはまだ新鮮だろうけど、バンドにとってはもう魂の一部になっちゃってる。次に進む準備は出来てるよ。


「The First Exit」の楽曲はツアーの合間の数日で書かれたそうですが、Tramhausの楽曲制作については、そういうやり方しかないのでしょうか?

Julia: 2週間きっかり。そのやり方しかないと思う!自分ら、いつもギリギリにならないとやらないから。

Jim: バンドの初期の曲はコロナのとき書いたから、リハをやる時間がたっぷりあった。ツアーをやり始めたら、すぐにごたついて、3年間で増えた曲って「Minus Twenty」と「Erik's Song」くらい。

Julia: あの2週間の自分らのマインドって「何かが生まれるよう祈ろう!」って感じだった。あの頃はお金もなかったし、皆んなまだ副業もやってた。ホテルの部屋や楽屋で曲を作るとか、ヴァンの中でアイディアが浮かんだ…みたいなバンドの話をよく聞くけど、自分らはそんな感じでもない。そういうのに何度かトライしてみたこともあるけどダメだったし…土壇場のプレッシャーが必要!





Tramhausはいつもツアーをされてるので「ロックンロールの最も多忙なバンド」の称号を差し上げられると思います。心と体をパーフェクトな状態に保つヒントや秘訣は何かありますか?

Jim: バンドとしてDIYの精神を忘れないようにしている。運転も自分たちでするし、僕らに同行するのはバンド専属のサウンドエンジニア1人だけ(※上の写真の撮影者でもある「6人目のTramhaus」ことElmo Taihituのこと)。Tramhausにはツアーマネージャーもいないけど、全部自分たちでやれるって意味でその方が都合がいいんだ。そんな訳で、セルフケアをして頭をスッキリさせたり、1人で散歩に出かけたりする時間を持つのは特に重要。ツアースケジュールがびっしりな時はそういう休憩時間が欠かせない。

Julia: 今回のツアーではたくさん本を読んでる。自分らは本を交換するのが好きなんだけど、個人的にはそれがとても楽しい。


本屋で働くオタクとして質問せずにいられないのですが、最近のおすすめ本は何ですか?

Jim: 去年のツアー中、村上春樹の「コインロッカー・ベイビーズ」を読んで大好きになった。PUNKで奇抜でクール!あれ以来皆んなに薦めてるよ。

Julia: 今たくさん読んでるから色々あるけど…ハニヤ・ヤナギハラ(※アメリカの小説家)の「To Paradise (2022)」かな。その前の「A Little Life (2015)」もアルバムのレコーディング中に読んだんだけど、赤ん坊みたいに泣かされた(※本作は、幼い頃から性虐待を受け続け心と身体に深い傷を負った弁護士の青年を親友が愛で救おうとする重い内容。日本語の訳書は未刊)。「To Paradise」も同じくらい素晴らしいけど。今回のツアーで読書は絶対外せない。皆んなでFortnite(※無料のバトルロイヤルゲーム)をやりたくなることもあるけどね。そういえばNintendo Switchを持ってきたけどまだ触ってもいない。

Jim: 手元に本があってこれから何時間もドライブできると思うと、どんなに幸せな気持ちになることか…。幸い僕らは乗り物酔いとは無縁だし!


インタビューでは必ずTramhausの素晴らしいライブパフォーマンスが話題に上りますが、スタジオワークの方をもっと熱心に掘り下げてほしいと不満に思うことはありますか?

Jim: いや、インタビューではアルバムに関する質問もたくさんされるから。同じ答えを繰り返さないようオリジナリティーのある答えをするのが難しいこともあるけど。

Julia: ジムと私はスタジオでの作業があまり好きじゃないから…アルバムのレコーディング方法に関する具体的な話は、きっと他のメンバーなら気の利いた答えをするんだろうけど、自分らはダメ!すべての音符にこだわるみたいなのって自分らの域を超えてる。スタジオワークってホント苦痛。


バンド活動に集中する為、メンバー全員で仕事を辞める決断をされたようですが、それはTramhaus史上最も難しい決断でしたか?

Jim: 完全に仕事を辞めたわけじゃないんだけど、かなり調整とかして変化があったよね。僕はまだフルタイムの仕事をしてるけど、とても融通が利くから助かってる。今Nadya (gt.)とLukas (vo.)が僕のために仕事してくれてるから、皆んなにとってワークするシステムが実現できてる。

Julia: 自分はバーで働いてるから、ツアーがない時は出来るだけ多くシフトに入るようにしてる。その前はあまり融通の利かない所で6年間働いてたんだけど(※フランスでのブレイクのきっかけとなったセッション動画「Roodkapje Session (2021)」を撮影したアートスペース兼ライブハウスの中にあるハンバーガーショップ。マネージャーだったJuliaは急な呼出し等あって大変だったらしい)、ツアーバンドの生活とは両立出来なかった。そこを辞めるのはとんでもなくリスキーだったんだけど!でも自分たちは何も後悔してない。どんな(ライブの)日程にも「Yes」って言えるから。





Tramhausは完全にヨーロッパのバンドだと思いますが、欧州ツアーで体験した最悪の体験談って何かありますか?

Jim: あんまりそういう話ってないんだよなぁ。オランダ、ベルギー、フランスで出会う人にはとてもよくしてもらってるし…今はもっと大きめの会場でライブするようになったけど、それでも何もかもがプロフェッショナル。例えば、今回のツアーで初めてセルビアに行った時、ベオグラードには知ってる人が2人しかいなかったけど、とてもクールだった!もっと正確に質問に答えるとすれば1つネタがあって…僕らはどこか人里離れた場所で眠っていたんだけど、僕が寝転んでた薄いマットレスは黒胡椒の臭いがしてた。必ずしも不快ってわけじゃないんだけど、ちょっと変だと思った。その翌日臭いの原因を確かめたくてググったら、最初にヒットしたのが「ネズミの問題をどう解決するか」。足の指が失くなったりTシャツに穴があいたりする前に急いで逃げ出したよ。

Julia: 最初のツアーで車が故障しちゃってメンバー皆んなで一緒に泣いたのはあれが初めてだった。代車が来なくて4日間もポーランドから出られなくて、全部キャンセルすべきか悩んで、希望を持ち続けるのが大変だった。結局どうにかなったんだけど、地獄の底に落ちたって感じだった!ワルシャワがどんなにクールな街か分かったのは良かったけど…(※英語の通じないポーランドで四苦八苦するバンドの様子を綴った2022年8月のMicha(gt.)によるダイアリー記事はこちら)。


どこかで読んだのですが、時間とお金があればオーケストラや大合唱団とコラボしてみたいそうですね。PUNKシーンにクラシック音楽を広めようとされている?

Jim: 誰が言ったのか知らないけどNadyaかLukasが言いそうだね!今、初めて聞いたよ。例えば、ビートルズの曲みたいにオーケストラの壮大な感じをやれたらきっと素晴らしいだろうね。

Julia: オーケストラのサウンドなら大好き。特にバイオリンとかの弦楽器。映画音楽にもとても惹かれるし、Tramhausがサウンドトラックを作れたらいいなと思う。とてもドラマチックなものになるだろうし、大胆な試みになるはず!


19 September 2024

Tramhaus(トラムハウス) | Micha Zaatインタビュー


ロッテルダムのポストパンクバンド・Tramhaus(トラムハウス)のデビューアルバム「The First Exit」がついに9月20日リリースされる。直近ではBBC Radio 6 MusicのSteve Lamacq(スティーヴ・ラマック)、Radio XのJohn Kennedy(ジョン・ケネディー)の番組で「Ffleur Hari」がオンエア、既にUKメディア・The Quitusにインタビュー記事(4月23日)が掲載される等、国外での滑り出しも上々だ。

新人ながら自国オランダやフランスで確固たるファンダムを誇る彼らは、10月から欧州&UKアルバムリリースツアーに出発するが、当然次に狙うのは(日本を含む!)世界進出となるだろう。その際、最難関となり得るのがアメリカツアーだ。ご存じの通り、バンドがアメリカツアーするのに必要なPー1Bビザの申請費用は2024年4月1日から爆上がりしており、「国際的に認められたグループ」であることを示す書類等の提出も必要になる。Tramhausの場合、ESNS 2024(Eurosonicフェスティバル)のMME(Music Moves Europe)アワードのオランダ代表にノミネートされた経歴が大きいとは思うが、やはり英語圏での高評価の証しも欲しいところ…。

そこで「持ってる男」ギタリスト・Micha(ミシャ)の登場である。彼は「ある特別な裏技(?)」でアメリカに行くことなくシアトルの有名ラジオ局KEXPのDJ・Kevin Cole(ケビン・コール)とコネクションを作ったのである。詳しい話はMichaが(たぶんメールで)回答した下記インタビューを読んでほしいのだが、非英語圏のニューカマーにとってKEXPで2度もオンエアしてもらえたことは大きな意味を持つはずだ。

ファンとしては近い将来、Kevin ColeのホストでTramhausがKEXPでプレイする姿を見てみたい。同郷のIguana Death Cult(イグアナ・デス・カルト)先輩が昨年USツアーに絡めてKEXPライブに出演済みだから、きっとTramhausも!…と思いたいが、実はイグアナ先輩はアメリカのレーベル所属なのである。

来日直前日本語インタビューで、海外に軸足を移す方策を取る同胞にほろ苦い気持ちを覚えつつ「地元ロッテルダムのシーンにもっと誇りを持ちたい」と語っていたTramhaus。世界を狙えるポジションに位置する彼らの今後の展開から目が離せない。

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【元ネタ記事】Start Listening To: Tramhaus (Still Listening 2024年5月28日)


以下、当ブログによる翻訳(インタビュー回答者:Micha(Gt.))


Tramhausの音楽をよく知らない人に、バンドが誰で、どこ出身で、どんな音楽をやっているのか教えてもらえますか?

僕らはロッテルダム出身の5人組インディーロック/ポストパンク/ノイズロックのバンドで、名前はLukas(ルカス/Vo.)、Nadya(ナジャ/Gt.)、Julia(ジュリア/Ba.)、Jim(ジム/Drs.)、Micha(ミシャ/Gt.)。激しいけど踊れる曲、暴れて爆発してるみたいだけど、いろんな形の愛や人生を祝福する音楽を作ってる。メンバーは皆んなそれぞれ、ちょっと違ったジャンルを聴いてるから、バンドのサウンド的には結構振れ幅があるかも。

デビューアルバム「The First Exit」のリリース、おめでとうございます!アルバムのタイトルに込められたインスピレーション、バンドにとってそれが何を意味するか教えてもらえますか?

Lukas(Vo.)がこのタイトルを思いついたんだけど、数年前、彼がゲイだとカミングアウトしたことを言ってるんだ。リリック的には、それがアルバム全体のテーマになってる(※別インタビューでLukasは「ストレートの世界でゲイとして育った若者のことを歌っている。意図的ではなかったが書き始めたらそうなった」と語っている)。僕にとってサウンド的には、閉塞感とか、常に一番近い出口はどこか探してるようなちょっと不安で落ち着かない感じを意味していて、その感覚をギタープレイに取り込むようにした。緊張と解放みたいなね。

ニューシングル「Once Again」はKEXPで初公開されました。あんな有名なプラットフォームで曲が紹介されるのってどんな感じでしたか?

この話にはちょっとした前フリがあって、1年くらい前にアゾレス諸島(※ポルトガル領。大西洋に浮かぶ9つの島で構成され、フェスは最大のサンミゲル島で開催)のTremor(トレモア)フェスティバルに出演(※2023年3月29日)したんだけど、ホテルがサウナ付きで僕とサウンドテックのElmo(エルモ)で朝、行ってみることにしたんだ。そしたらKEXPのKevin Cole(ケビン・コール)も同じことを考えてたみたいで、蒸し暑いサウナの中で結構長く話をすることになったんだ。僕らのファンだと言ってくれたんだけど、サウナでのランデブーの後、KEXPでもっとオンエアするって約束してくれた。そう、だからKEXPでのプレミア公開はとても有難いし光栄に思ってる。サウナがあってマジ感謝だね。


【補足】 

2023年3月29日+ サウナでKevin Coleと偶然知り合う

2023年4月19日 "Make It Happen"がKEXPのSong of the Day

2024年5月24日 "Once Again"がKevin DJのKEXP「Drive Time」でオンエア

「Song of the Day」に選ばれた際の地元ロッテルダムのメディア記事によると、Kevin Coleはライブ会場が混雑し過ぎていてTramhausのステージを見逃していたが、その後サウナでMichaと遭遇。最初Michaは彼と気付かず話していたとのこと(Lukas談)。なお、Kevin ColeはTramhausがノミネートされた2024年MME(Music Moves Europe)アワードの審査員としても名を連ねていた。

Source: Open Rotterdam (2023年4月19日) 

 

「Once Again」のMVは、ロックダウン中のタイトルもないYouTube動画がランダムに使われているユニークなものでした。このコンセプトの着想はどこから?

このアイディアは、以前から何度も組んでるビデオアーティスト、Peter Marcus(ピーター・マーカス)(※「I Don't Sweat」「The Goat」「Minus Twenty」のMVも担当)の閃きから生まれたものなんだ。このミュージックビデオは、僕らが生きるデジタル時代の不条理を物語ってる。何でもかんでもキャプチャされ、何百万もの知らない人達に見られる可能性がある時代。このアイディアに僕らはすごく魅かれた。このMV自体に特に美的な価値やリアルな物語性はないから、映像から何を生み出すかは全部視聴者任せ。その辺にあるものを何でも使って自分だけのストーリーをクリエイトする、その人の生まれ持った才能にかかってるってわけ。




「The First Exit」のトラックリストのタイトルには「Semiotics」や「Ffleur Hari」のように面白いものがあります。これらの曲にまつわるテーマやストーリーについて少し教えてもらえますか?

えっと、「Fleurr Hari」っていうのはLukasが急ぎで曲の構成を書いてた時に浮かんだ実在しない言葉で、メンバーが気に入ってそのまま使うことにした。有名なボクシングのチャンピオン、Badr Hari(バダ・ハリ ※オランダ出身のキックボクサー)の親戚のことかもしれないし、そうじゃないかもしれない。「Semiotics(※記号論)」はLukasの性的な逸脱についての曲だから、それは置いておくことにしよう。





ヨーロッパ、日本、アメリカと世界中をツアーしてますよね。ツアーでの忘れられないエピソードは何かありますか?

沢山あるな…。日本は本当に何か違ってて他のどの観客とも比べものにならない。日本の人って曲を気に入ってくれたら、ホント大好きになってくれる。で、僕らの方も大好きになっちゃった。あの国で経験したホスピタリティーとか謙虚さとか…。ここ数ヶ月ツアーが集中してたけど、おかげで家族のように成長できたかな。

SXSW(アメリカ)、Best Kept Secret(オランダ)、Sziget Festival(シゲト・フェスティバル/ハンガリー)等メジャーな音楽フェスに出演されてますよね。これまでで最も印象に残っているフェスは何ですか?

ヨーロッパのいろんな大規模フェスに出演するのは、知り合いのミュージシャン達と楽屋(かなりゴージャスな場合が多い)で再会できるのが嬉しいよね。数ヶ月の海外ツアーを終えて里帰りするみたいな気分。ずっとバンドメンバーとしか過ごしてなかったわけだから。「また1年生き延びられた、共に祝おうぜ」みたいな。

次回のツアーは28公演10ヶ国だそうですが、大体的なツアーに向けてどんな準備をするのでしょう?最も楽しみなことは何ですか?

あらかじめ十分な数の下着を買っておくこと。一番楽しみにしてるのは、自分が今やってるのが本当に特別なことだと実感する、ふとした瞬間を味わうこと。

2021年の結成以来、シングル数枚とEP1枚をリリースされています。初期のリリースから今度のデビューアルバムまで、バンドはどのように進化してきましたか?

ロックダウンの最中にバンドを始めた頃は、単に退屈してて怒りのパンク音楽を作りたかっただけだけど、バンドはもっと内省的で物事を深く考えるスタイルに移行してきてる。相変わらずサウンドは威嚇的で危険だけど、それだけじゃなく、より考え抜かれた音になってる。バンドとしてはもうちょっと実験してみたいかな。自分達とバンドの限界を試してみたい。

今、気に入ってるのは何ですか?

ケンドリック・ラマ―とドレイクのビーフ(※対立・抗争)。

今、嫌いなのは?

ケンドリック・ラマ―とドレイクのビーフ。

子供の頃から聴いてるアルバムを1枚挙げて、それが今も大切な理由を教えて下さい。

The Strokes(ザ・ストロークス)の「Is This It」。10才位の時、CDをゲットして何週間も聴くのを止められなかった。今でもヤラれてるよ。シンプルで真っすぐなところが良くてアルバム全曲が最高。シンプルな時代を思い出させてくれる。

リスナーには「The First Exit」やTramhausの楽曲全般からどんなメッセージやフィーリングを受け取ってほしいですか?

たくさんのことを感じてほしい。何かその人の感情が搔き立てられるなら、どんな感情かはあまり気にしない。無感覚に消費される業界の製品を押し付けられる時代、僕らのアルバムが気に入ってもらえなかったとしても、その人に無表情でいられるより、その方が僕は納得できると思う。


Micha Zaat(右端)


Tramhaus

■ HP: https://tramhaus.com/

■ X(旧Twitter): https://twitter.com/TRAMHAUSrtm

■ Instagram: https://www.instagram.com/tramhaus.rtm

■ Bandcamp: https://tramhaus.bandcamp.com/


14 May 2024

Tramhaus(トラムハウス)| ニューシングル「Beech」について語る

Photo: Elmo Taihitu


Tramhaus(トラムハウス)を初めて観たのは2023年11月14日、下北沢Basement Barのジャパン・ツアー最終日だった。当時、日本で無名だったTramhausがSNSの口コミで徐々に盛り上がりを見せ、ほぼフルハウスで最終日を迎えられたのは、まさにDIY精神の体現であり、近い将来あの場にいたことを誇れる"I was there"案件となったのはまず間違いがない。

あの段階で奇跡の初来日が実現したのには、いくつかのマジックの連鎖があった。TramhausがMusic Moves Europe Awards 2024のオランダ代表になるほど自国で勢いがあること(他国代表を見ても、いわゆる"ポストパンク"で選ばれたのがレア)、2023年11月9日東京開催のライブ・ショーケースイベント(一般社団法人Independent Music Coalition JapanとDutch Music Exportが共同主催)に招聘されたこと(ドラムのJimが流暢な日本語を話せるのが理由の一つにあるはず)、来日の交通費をオランダ大使館が負担してくれるというチャンスを生かし、バンド側が原宿のBig Love Recordsに連絡を取り日本ツアーをしたい旨伝えたこと、そして何よりも、金銭的リスクを厭わずライブ公演主催の決断をしたSchool in London代表・村田タケル氏の心意気である。

自分は来日PRインタビューの翻訳ボランティアをやらせて頂いたおかげで、やたらTramhausに詳しくなってしまった。今秋待望のデビューアルバム"The First Exit"をリリースする彼らは、日本やアメリカに降り立つタイミングでアルバムからの曲を初披露しているようだが、前述の来日時にプレイしてくれたのが"Beech"と"Once Again"だった(SXSWでは"Ffleur Hari"を演奏)。「あれ?ちょっとスロー?」が第一印象だったが、その時は歌詞の内容までは分からなかった。

2024年4月23日、デビューアルバムからようやく"Beech"の配信がスタートしたタイミングでいくつかのインタビュー記事が公開された。サウンド面についての言及は今のところあまり見かけないが、彼らはいわゆる”ポストパンク・バンド”と呼ばれることに違和感を覚え始めているように感じるし、新型コロナウイルスのロックダウン中に暇を持て余したロッテルダムのシーンの実力者達が「Viagra Boys的なバンドをやろうぜ!」と集まった初期衝動から徐々に変化を遂げ、デビューアルバムにして早くも最初の脱皮(The First Exit)を図ろうとしている…ということのようにも映る。

「ロッテルダムよ、行動せよ」と歌い地元ファンダムを獲得したTramhausは、少なくともリリック的には内省的な方向に向かうようだ。今回翻訳した電話インタビューでVo.のLukasは、それがどう受け止められるかに多少の戸惑いも見せている。"Beech"の歌詞については、本ブログ記事の末尾に(あくまで自分の解釈による)抄訳を載せたので参照して頂ければと思う。そして自分は、"Beech"がLukasが若い頃(といっても来日時まだ25才だと言っていたが)通っていたバーの名前であること、アムステルダムが東京ならロッテルダムは大阪であること、英語の歌詞で歌うのはオランダでごく普通であること等を、下記インタビュー記事に登場する「あの人」から聞いた気がする。Tramhausライブの熱気冷めやらぬ、あの下北沢Basement Barのフロアで…。


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【元ネタ記事(オランダ語)】Tramhaus tapt uit nieuw vaatje op emotionele punk-tune (3voor12 2024年4月23日)

以下、当ブログによる翻訳


Tramhausの最新曲は、どこからインスピレーションを得ているのだろう? 今回はバンド初期の楽曲の多くに見られる陰鬱な世界情勢(あるいはロッテルダムの社会情勢)からではない。そう、”Beech(キャッチ―で爆発的なヴォーカルが光る超エネルギッシュなパンク・チューン)”でのTramhaus(ロッテルダム)は、全く異なるアプローチを試みたのだ。正確には、シンガー・Lukas Jansen(ルカス・ヤンセン)が抱く感情である。「ロッテルダムとか世界で起こってることだけ書いていれば、そのうち先が見えてしまう」電話越しにJansenが笑う。「ちょっと深く掘り下げて、もっと自分自身について書くときが来た。それがセラピーにもなったしね」

本ニューシングルでJansenが回想しているのは、彼がカミングアウト(*原文は斜字)する布石となった、ある人物との交際についてである。大変難しいテーマだが懐かしい思い出でもある。「とてもエモーショナルな曲。あのシチュエーションからとても美しい友情が芽生えたわけだから。つまり"Beech"に注いだ情熱は、すべてあの人への愛から生まれたってこと」


"Beech" - Tramhaus


"Beech"は、今秋発売のTramhaus待望のデビューアルバム"The First Exit"から試聴可能な最初の曲である。もう1年も前に完成済みのアルバムだ。本作では"Beech"と同じようなテーマがほぼ全曲で取り上げられており、社会批判的な曲がきっかけでファンになった人には少々受け入れ難いかもしれない。が、Jansen自身も、このように私的な楽曲を世に送り出すことにさほど興奮を覚えていない。「自分のことを書いたとてもパーソナルな曲。だからこの曲について意見があるとしたら、皆んなどんな風に思うんだろう? ちょっと興味あるよね。自分もロッテルダムのことを歌うよりエキサイティングじゃないって感じるかもしれないし、結局皆んな何か思うところがあったりするんだろうな」

"The First Exit"は9月20日リリース予定。その後、Tramhausはバンド史上最大の欧州ツアーに出発、Paradiso(*アムステルダムにある教会を改装したヴェニュー)のメインホール(*キャパ1,500人)で10月2日にライブを行う。またBest Kept Secret(*オランダの音楽フェス)にも出演予定(6月8日)。



"Beech(ブナノキ)" 歌詞抄訳

囚人と道化師

街にある

樹木と同じ名前のバー

知らぬ者同士、だから会話が始まる

心を解き放ち"誰でもないこと"を楽しんだ


Ya ya ya...

何でも揃ってる気もするけど

何か足りない

僕は、僕は...

君といると心が楽になる

そばにいて欲しい

君が必要、君が必要なんだ


胃が痛むのはいつものこと

恋に落ちる前からずっと、そこが僕の居場所

もうだいぶになる

知らぬ者同士じゃないけど、会話が始まる

ゆっくりしてくれて構わないけど

僕は行かなくちゃ、行かなくちゃならない

*歌詞を若干修正しました。