9 June 2025

Tramhaus(トラムハウス) | Julia & Jimインタビュー

Photo: Elmo Taihitu


ロッテルダムのインディーズシーンを牽引するTramhaus(トラムハウス)が日本に帰ってくる。前回の初来日から1年8ヶ月、今回はデビューアルバム「The First Exit」リリースツアーとして福岡(!)・大阪・東京の3公演となる。現在欧州ツアー真っ最中の彼らは、6月27日ベルギーのBear Rockフェスティバル出演後、休む暇もなく7月1日福岡から開始されるアジアツアーに臨む形となる。

なお、DIY精神にコミットするTramhausの来日ツアーを主催するのは、またもや個人、つまり元School in Londonの村田タケル氏である(初来日ツアーで奇跡の黒字化を達成!)。…というわけでいろんな意味でドキドキが止まらないまま、取り急ぎTramhaus最新インタビューを翻訳してみることにする。今回フランスのメディアのインタビューに答えているのは、メンバー内で1番ピアスの数が多いPUNKなベーシスト・Juliaと、流暢な日本語を話すドラマーのJim 。2人の自然体の受け答えから今現在のバンドのヴァイブスが伝わってくると思う。

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【元ネタ記事(フランス語)】INTERVIEW - Tramhaus (Goûte Mes Disques  2025年6月1日)


以下、当ブログによる翻訳(前文省略)


「The First Exit」のリリース後、インタビューの度にデビューアルバムのリリース日を聞かれなくなってホッとされたのではないでしょうか?

Jim: その質問をされなくなったのは良かったんだけど、すぐにセカンドアルバムがいつ出るか聞かれるようになっちゃった!

Julia: 少なくとも1年待って。

Jim: 今のところファンは充分満たされてるみたいだけどね。


「The First Exit」の評価が概ね良かったことで、期待に応えねばというストレスから解放されたと感じましたか?

Jim: あのアルバムには相当プレッシャーがあってめちゃビビってた。人それぞれ基準が違うから何を期待されてるのかも分からないし。プレスやファンからの反応がポジティブなのはバンドにとってとても良かった。ネガティブな反応を全く聞いたことがないとか、信じられないよね。

Julia: ホントほっとした!でも同時にセカンドアルバムにかなりプレッシャーがかかってる。


バンドが次にどうなるかかなり不安に思われてるってことですね。アーティストという存在は苦悩する運命にある?

Julia: そう、自分たちにはマゾの気質があると思う。

Jim: ちょうどこれから新曲を書き始めるところで、スゴくワクワクしてる。「The First Exit」のリリースは2024年の9月だけど、2023年の夏にはもう完成してたから、皆んなにはまだ新鮮だろうけど、バンドにとってはもう魂の一部になっちゃってる。次に進む準備は出来てるよ。


「The First Exit」の楽曲はツアーの合間の数日で書かれたそうですが、Tramhausの楽曲制作については、そういうやり方しかないのでしょうか?

Julia: 2週間きっかり。そのやり方しかないと思う!自分ら、いつもギリギリにならないとやらないから。

Jim: バンドの初期の曲はコロナのとき書いたから、リハをやる時間がたっぷりあった。ツアーをやり始めたら、すぐにごたついて、3年間で増えた曲って「Minus Twenty」と「Erik's Song」くらい。

Julia: あの2週間の自分らのマインドって「何かが生まれるよう祈ろう!」って感じだった。あの頃はお金もなかったし、皆んなまだ副業もやってた。ホテルの部屋や楽屋で曲を作るとか、ヴァンの中でアイディアが浮かんだ…みたいなバンドの話をよく聞くけど、自分らはそんな感じでもない。そういうのに何度かトライしてみたこともあるけどダメだったし…土壇場のプレッシャーが必要!





Tramhausはいつもツアーをされてるので「ロックンロールの最も多忙なバンド」の称号を差し上げられると思います。心と体をパーフェクトな状態に保つヒントや秘訣は何かありますか?

Jim: バンドとしてDIYの精神を忘れないようにしている。運転も自分たちでするし、僕らに同行するのはバンド専属のサウンドエンジニア1人だけ(※上の写真の撮影者でもある「6人目のTramhaus」ことElmo Taihituのこと)。Tramhausにはツアーマネージャーもいないけど、全部自分たちでやれるって意味でその方が都合がいいんだ。そんな訳で、セルフケアをして頭をスッキリさせたり、1人で散歩に出かけたりする時間を持つのは特に重要。ツアースケジュールがびっしりな時はそういう休憩時間が欠かせない。

Julia: 今回のツアーではたくさん本を読んでる。自分らは本を交換するのが好きなんだけど、個人的にはそれがとても楽しい。


本屋で働くオタクとして質問せずにいられないのですが、最近のおすすめ本は何ですか?

Jim: 去年のツアー中、村上春樹の「コインロッカー・ベイビーズ」を読んで大好きになった。PUNKで奇抜でクール!あれ以来皆んなに薦めてるよ。

Julia: 今たくさん読んでるから色々あるけど…ハニヤ・ヤナギハラ(※アメリカの小説家)の「To Paradise (2022)」かな。その前の「A Little Life (2015)」もアルバムのレコーディング中に読んだんだけど、赤ん坊みたいに泣かされた(※本作は、幼い頃から性虐待を受け続け心と身体に深い傷を負った弁護士の青年を親友が愛で救おうとする重い内容。日本語の訳書は未刊)。「To Paradise」も同じくらい素晴らしいけど。今回のツアーで読書は絶対外せない。皆んなでFortnite(※無料のバトルロイヤルゲーム)をやりたくなることもあるけどね。そういえばNintendo Switchを持ってきたけどまだ触ってもいない。

Jim: 手元に本があってこれから何時間もドライブできると思うと、どんなに幸せな気持ちになることか…。幸い僕らは乗り物酔いとは無縁だし!


インタビューでは必ずTramhausの素晴らしいライブパフォーマンスが話題に上りますが、スタジオワークの方をもっと熱心に掘り下げてほしいと不満に思うことはありますか?

Jim: いや、インタビューではアルバムに関する質問もたくさんされるから。同じ答えを繰り返さないようオリジナリティーのある答えをするのが難しいこともあるけど。

Julia: ジムと私はスタジオでの作業があまり好きじゃないから…アルバムのレコーディング方法に関する具体的な話は、きっと他のメンバーなら気の利いた答えをするんだろうけど、自分らはダメ!すべての音符にこだわるみたいなのって自分らの域を超えてる。スタジオワークってホント苦痛。


バンド活動に集中する為、メンバー全員で仕事を辞める決断をされたようですが、それはTramhaus史上最も難しい決断でしたか?

Jim: 完全に仕事を辞めたわけじゃないんだけど、かなり調整とかして変化があったよね。僕はまだフルタイムの仕事をしてるけど、とても融通が利くから助かってる。今Nadya (gt.)とLukas (vo.)が僕のために仕事してくれてるから、皆んなにとってワークするシステムが実現できてる。

Julia: 自分はバーで働いてるから、ツアーがない時は出来るだけ多くシフトに入るようにしてる。その前はあまり融通の利かない所で6年間働いてたんだけど(※フランスでのブレイクのきっかけとなったセッション動画「Roodkapje Session (2021)」を撮影したアートスペース兼ライブハウスの中にあるハンバーガーショップ。マネージャーだったJuliaは急な呼出し等あって大変だったらしい)、ツアーバンドの生活とは両立出来なかった。そこを辞めるのはとんでもなくリスキーだったんだけど!でも自分たちは何も後悔してない。どんな(ライブの)日程にも「Yes」って言えるから。





Tramhausは完全にヨーロッパのバンドだと思いますが、欧州ツアーで体験した最悪の体験談って何かありますか?

Jim: あんまりそういう話ってないんだよなぁ。オランダ、ベルギー、フランスで出会う人にはとてもよくしてもらってるし…今はもっと大きめの会場でライブするようになったけど、それでも何もかもがプロフェッショナル。例えば、今回のツアーで初めてセルビアに行った時、ベオグラードには知ってる人が2人しかいなかったけど、とてもクールだった!もっと正確に質問に答えるとすれば1つネタがあって…僕らはどこか人里離れた場所で眠っていたんだけど、僕が寝転んでた薄いマットレスは黒胡椒の臭いがしてた。必ずしも不快ってわけじゃないんだけど、ちょっと変だと思った。その翌日臭いの原因を確かめたくてググったら、最初にヒットしたのが「ネズミの問題をどう解決するか」。足の指が失くなったりTシャツに穴があいたりする前に急いで逃げ出したよ。

Julia: 最初のツアーで車が故障しちゃってメンバー皆んなで一緒に泣いたのはあれが初めてだった。代車が来なくて4日間もポーランドから出られなくて、全部キャンセルすべきか悩んで、希望を持ち続けるのが大変だった。結局どうにかなったんだけど、地獄の底に落ちたって感じだった!ワルシャワがどんなにクールな街か分かったのは良かったけど…(※英語の通じないポーランドで四苦八苦するバンドの様子を綴った2022年8月のMicha(gt.)によるダイアリー記事はこちら)。


どこかで読んだのですが、時間とお金があればオーケストラや大合唱団とコラボしてみたいそうですね。PUNKシーンにクラシック音楽を広めようとされている?

Jim: 誰が言ったのか知らないけどNadyaかLukasが言いそうだね!今、初めて聞いたよ。例えば、ビートルズの曲みたいにオーケストラの壮大な感じをやれたらきっと素晴らしいだろうね。

Julia: オーケストラのサウンドなら大好き。特にバイオリンとかの弦楽器。映画音楽にもとても惹かれるし、Tramhausがサウンドトラックを作れたらいいなと思う。とてもドラマチックなものになるだろうし、大胆な試みになるはず!