ついにロッテルダムのポストパンクバンド・Tramhaus(トラムハウス)の2度目の来日ツアーが本日7月1日福岡からスタートする。今回はあのele-kingにLukas (Vo.)のインタビュー記事が掲載され(!)、Tramhausの日本での知名度向上を願う自分としては嬉しい限りである。…というわけで、2023年11月初来日時の翻訳ボランティアをきっかけに彼らを追い続けてきた自分が読み溜めたTramhausのWeb記事の中から、取り急ぎ彼らの日本に関する発言をキュレーションしてみることにする。
■ 夢は日本でのライブ
まず前回の初来日時の主催・村田タケル氏によるインタビューで、ヴォーカルのLukasは「1年前のインタビューでバンド最大の夢は日本でプレイすることと答えた」と発言していた。そのインタビューがロックダウン中のこれである。
Lukas: 僕らは本当に日本に行きたいと思ってる。とにかくツアーに出たくて、もちろん今は無理だけど、日本は(行きたいツアー先)リストの上位にある。
Source: Heet zonder zweet: de Rotterdamse postpunkers van Tramhaus (Effenaar 2022年1月26日)
Julia: ドラマーのJimは日本の大ファンで、毎年日本に行って1ヶ月くらいステイしてる。日本語のほぼバイリンガルで2時間抜けてカフェでレッスンを受けたりしてる。Source: [INTERVIEW] Tramhaus aux portes du succès (Listenup! 2023年11月22日)
■ 一度ファンになったらとことん応援する日本人ファン
今やTramhaus研究家(?)みたいになってしまった自分にとって、ギタリスト・Michaはバンドの中で少し異色な存在である。オランダが誇るサキソフォーンプレーヤー・Benjamin Hermanのアルバムへの参加(なんと彼の苗字である「Zaat」という曲もある!)、共著ではあるがロッテルダムのライブ会場の歴史に関する本の執筆、Webメディアへの寄稿等、吉本興業で言えば、又吉的な立ち位置にいると思っている(*万一、英語に自動翻訳された場合に備え補足しておくと、日本のお笑い芸人のエージェント・吉本興業に所属する又吉直樹とは、小説家でもあり、2015年名誉ある芥川賞を受賞)。有名大学卒で歴史や哲学を勉強していたが、今はポストパンクバンドのギタリストとして世界中をツアー中、という異色な経歴の持ち主である。
そんなMichaは折に触れて、日本のファンについて言及してくれるのだが、ツアーでの忘れ難いエピソードについて聞かれた際の答えがこちら(他にも課金は必要だが、オランダ語記事の見出し:日本にも熱狂的ファン「ファンになったら日本人はとことんファンになる」)。
Micha: 日本は本当に何か違っていて、他のどの国の観客とも比べ物にならない。日本の人って音楽を気に入ってくれたら、本当に大好きになってくれる。あの国で経験したホスピタリティーとか謙虚さとか、僕らの方も大好きになっちゃった。
Source: Start Listening To: Tramhaus (Still Listening 2024年5月28日)
■ ライブでの日本の観客の反応
個人的に最も興味深かったのは、2024年4月のThe Quietusの英語記事だった。翻訳してブログ記事にしたかったが、あのMichaが「もうこのインタビュアー以外の取材は受けたくない」とインスタで言っていたように、哲学の知識がないと訳しきれない部分が多々あり断念した経緯がある。
この英語記事によると、彼らは初めて訪れた未開の地である日本を「とてもクレイジー」で「細部にこだわる」場所だと感じたようだ(それでもSXSWで訪れたアメリカほどは異質に感じなかった…との記述もあり具体的に訊いてみたい気もする)。
Lukas: すっごく面白いと思ったのは、日本のお客さんってどうリアクションすればいいかこっちに教えてもらいたがるってこと。あるレビューで誰かが「どう振舞えばいいか知りたかったけど、どう振舞おうが関係ないって分かった」みたいなことを書いてた。日本に行って気付いたんだけど、僕がこう(動いてみせる)したら、お客さんが皆んな同じように動いてくれる。めっちゃ覚えるのが早いんだ。だから次のライブでは、よし!これを利用してやろうって思ったよ。
Jim: 日本のお笑い芸人は全員大阪出身。大阪でのライブでは皆んながシンガロングしてくれた。東京のライブはそうでもなかったけど。
Julia: ウチらがやることをマネして(ここでの)ルールは何なのか探ってる感じだった。
Jim: この曲でモッシュピットが見たいって言えば、たぶんやってくれると思うよ。
Source: One Direction: An Interview With Tramhaus (Quietus 2024年4月23日)
この辺りのコメントは初来日した海外アーティストにほぼ共通している気もする。ちなみにお馴染みの「曲間のシーン(静寂)」については特に何も言及がなかった。
■ ギタリストNadyaについて
…とここまで爆速で書いて、Tramhaus結成の張本人・Nadya姐さんが登場していないことに気付いてしまった!前回の来日時、一番長く話ができたメンバーがギタリストのNadyaだったが、それは初来日インタビュー翻訳の為の鬼リサーチで浮かんだ疑問点への答え合わせがしたかったから。
Tramhaus結成前、NadyaはJazz歌手だった少し年上のルームメートの女性とVulva(女性器の外陰部を示す学術用語)というユニットを組んでいて、ジャンルは何と書くのが正しいか質問したところ、Sludge(スラッジ)だと教えてくれた(その手の音楽に無知な自分の為にSpotifyでMelvinsの「Houdini(1993年)」を例として見せてくれた)。どちらかと言うとTramhausではボーイッシュなイメージのあるNadyaであるが、女性の中絶の権利を主張するポリティカルなユニット・Vulvaではフェミニン全開なヴィジュアルでドラムを叩く姿がとてもクールである。赤ん坊の人形を燃やし物議を醸したVulvaのミュージックビデオ「Kill The Baby」(2023年オランダ映画祭ノミネート作品)を見れば、Tramhausでの彼女のサウンド面での役割や影響力をより深く理解できるのではと思う。
最後になりましたが、フジロック出演圏内に入りつつあるTramhausを今回の来日で見届けることが出来れば、近い将来「あ、俺、福岡/大阪で見たし」と自慢できる"I was there"案件になるのはまず間違いないので、平日の労働後、疲れた身体を引きずってでも観に行くことをお勧めします。このブログをほぼ記憶だけで書けてしまうオタク全開な自分からのレコメンドです!(時間がないのであまり推敲できないままUPします)
TRAMHAUS JAPAN TOUR 2025
チケットは下記リンクから!