9 July 2016

「幾何学模様(Kikagaku Moyo)」 i-D インタビュー



ロンドン発のファッション&カルチャー誌「i-D」より、日本人バンド「幾何学模様」のインタビュー(2016年6月13日付)和訳を掲載します。いわゆる「逆輸入バンド」と呼ばれる幾何学模様。これまでインタビューと言えば英語でしたが、先日「Qetic」による初めての日本語インタビューも発表されましたので「こちら(2016年5月12日付)」 も併せてご覧下さい。

【元ネタ英語記事】 peace out with kikagaku moyo, the new torchbearers of japanese psychedelia

以下、当サイトによる和訳
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ニュー・アルバム「House In the Tall Grass」をリリースしたばかりの幾何学模様。技術力が高く大変魅力的なバンドである。我々i-D誌スタッフは、幾何学模様のメンバーと会い、様々なことについて語ることが出来た。その内容は、日本にドラッグ・カルチャーがないこと、東京のミュージック・シーンの裏と表、メンバーが散髪する頻度等多岐に渡る。


サイケデリックの流行は1960年代~1970年代、確かに日本にも存在した。日本人は欧米のバンドからサウンドやスタイルを吸収し、サイケデリックというものについて理解はしていたものの、そのためのドラッグは持ち合わせていなかった。そんな時代から早送りして現在に目を向けてみると・・・。1970年代のロック、フォーク、クラウト・ロック、古典的インド音楽の要素をそのサウンドに取り入れた幾何学模様がここにいる。彼らは、高い技術を持つ5ピース・バンドであり、心身共に解放させるトランス可能な音楽を生み出し続けている。ツアー中のロンドンで、フロントマンのトモ・カツラダ(以下、「T」)、ドラマーのゴウ・クロサワ(以下、「G」)と、林檎を頬張りながらインタビューの席についた。


― 幾何学模様の皆さん、こんにちは!今、ツアー中なんですよね。幾何学模様の音楽に対して、どの国の反応が一番良かったですか?

G:アメリカはクレイジーだったよ。観客は超興奮して酔っぱらってて音楽なんて聴いちゃいなかった。

T: 日本で演奏する時は、真逆だからね。

G: 日本だと、誰かが演奏する時は喋っちゃいけないことになってる。だから僕らのことを観客が聴いてくれるという意味では良いんだけど、同時にもっと緊張するよね。

T: そうだね。何だか審査されてるみたいな感じ。皆んながそこに立ってて、ライブが良いか悪いかツイートしてるっていう。

G: でもヨーロッパだと全然違うよね。英国で演奏するのは本当に楽しい。たぶんロックンロールのカルチャーがあるせいかな。


― 最近の東京のサイケデリック・シーンはどんな感じなんですか?

G: 全然小さいよ。

T: 今、サイケデリック・バンドってあんまりいないよね。僕らと、あともっと年上のバンドAcid Mothers Templeとか。若いバンドだったら、Minami Deutsch


― 2バンドとも幾何学模様のレーベル「Guruguru Brain」と契約してますよね?そういう意味では、あなた方はサイケデリック・シーンのキュレーションをしているとも言えます。気に入ったバンドと契約して、レーベル所属バンドを輝かせる・・・的な。

T: そうだね。僕らはアジアのバンドにも目を向けてる。隠れたお宝がたくさんいるし、本当に素晴らしいんだ。


― 「Guruguru Brain」についてもっと話して頂けますか?

G: アジアのミュージック・シーンに注目してて・・・。僕らや他のアジアのバンドは、アメリカやヨーロッパのレーベルと契約すると成功したバンドっていう風に見られる。サイケデリックの主要マーケットだからね。でもそろそろ自分たちで何かやるタイミングが来たって思ったんだよね。

T: それに僕らはバンドとしてプレイしながら、アメリカやヨーロッパをツアーして、たくさんの人達と知り合った結果、世界中で音源を出すことが出来た。だから自分たち以外のバンドにも、同じことを経験してもらえるように頑張ってるところなんだ。


― サイケデリック・カルチャーの中で、出身地によってスタイルが違うと思うことはありますか?

G: あるよ。東京と大阪でさえ違うから。大阪のバンドの方が、もっとクレイジーで、型破りで、極端な傾向。東京はもっと控えめ。


― それはどうしてだと思いますか?

G: 大阪には、より強いスピリットとプライドがある。2番目に大きな街だし、「くたばれ東京!」みたいな感じ。

T: だから違ったスタイルを作り上げて目立とうとする。

G: 大阪人は東京人のことを流行に敏感でいつも恰好つけてるって思ってる。でも大阪には本当にいい感じのミュージック・シーンがあるよ。


― 日本には大規模なサイケデリック・ミュージック・シーンがあるのに、通常一緒に存在するはずのドラッグ・カルチャーがないっていうのは興味深いですね。

G: ヨーロッパやアメリカと較べるとそうだね。どういうことかっていうと・・・、僕らはアメリカや英国みたいな国からの音楽を子供の頃から聴いて育っていて、1960年代以降のサイケデリック・カルチャーやヒッピー・ムーブメントも知ってる。日本にも1960年代にそういうのはあったけど、イデオロギー的なものではなくて、もっとスタイル的なものだった。アメリカにはベトナム戦争みたいなのもあったけど、日本にはなかったし・・・。だけど今、僕らはああいうバンドを本当に観たんだ、ドラッグもやってたんだって想像の中にいる感じ。本当はやってないんだけど。じゃあ、どうすればいいの?ってなった時に、僕らは音楽に関して超極端な傾向にあるよね。限度を知らずプレイしまくるみたいな。ドラックをやってたらどんなプレイになるのかなんて想像できないけど。

T: そうだね、僕らはイマジネーションを使ってるよね。

G: 僕らは1960年代以降のサイケデリック・ロック・バンドがいろんな楽器を使ってるのが好きなんだ。あの時代のバンドって、違うジャンルとか、場合によっては人が喋ってるのをミックスしたりすることにオープンだよね。ヘビーな音とフォーク・スタイルを融合させたり・・・とても自由なんだ。


― 数年前に東京サイケデリック・フェスティバルを立ち上げましたよね?

G: うん、アメリカから帰国してバンドを結成した時、僕らが参加できるようなイベントが何もないって気付いたんだ。それで自分たちのイベントを始めて、似たようなバンドを探すようになったんだけど、僕らの企画したライブに来てくれるのは外国人か年上の人達ばかりだった。日本人の若者はあまり興味ないみたいで・・・。だから今は、リバプール・サイケデリック・フェスティバルに(Guruguru Brainの)ステージを出させてもらってる。


― 日本の若者のサイケデリックに対する興味は、これから育まれていくと思いますか?

T: うん、それはちょっとだけど始まりつつある。

G: 僕らの音楽のトレンドは、いつも日本だと後追いなんだよね。だから多分、ヨーロッパでサイケデリック・ミュージックの人気がなくなったら、今度は東京にトレンドが移動するから、ヨーロッパのバンドは皆んな東京に来てライブしなきゃならなくなる!


― 東京の他のミュージック・シーンで、幾何学模様はどう思われているのでしょう?

G: 東京じゃあまりライブを演らないから、外国のバンドだと思われてたりするかも。僕らにとって外国に行ってツアーするのはホント自然なことだった。だって東京だとライブするのにお金払わなきゃならないし。


― ライブするのにお金を払わなきゃならない?

T: うん、東京のプロモーター・システムって他に類を見ないものだよね。東京には小さいバンドをブッキングしてくれるようなプロモーターは全然いない。

G: まだ始まってないだけだけどね。でも逆に言えば、東京の良いところは、お金さえ払えば何でも好きな曲を好きな場所で演れるところ。

T: だから多分それが、幾何学模様が(東京で)実験的音楽を演れてる理由なんだと思う。プロモーターが極端な音楽を演ってるバンドにライブさせることは普通ないからね。


― 東京に行く外国人がサイケデリック・ミュージックのライブを経験するのにお薦めの場所はどこですか?

G: 高円寺に「DOM」っていうクールなリハーサル・スタジオがあるよ。ちょっと高円寺の真ん中からはハズれてるけど、僕らが住んでるところ。本当に安くて、(ライブのチケットは)5ドルとか8ドルだからとっても行きやすい。

T: 大体東京のライブだと、ローカルな場所で聞いたこともないようなバンドだとしても、25ドルとかする。高過ぎるから誰も行かない。来るのは友達だけ!

G: ライブに全く行ったことがない人も多いよね。


― 英国のカルチャーとは全く違いますね。今のところ、英国であなた方が大きな影響を受けたものがあるとすれば何でしょうか?

T: 映画。映画か大好きなんだ。いつもベーシストと一緒に観てる。


― どんな映画?

T: B級映画とチープなSF映画。最近1960年代のアートシアター系実験映画を観るの飽きちゃって・・・。何かつまらないって感じるようになったから、1980年代のファンタジー系映画をたくさん観るようになった。すごいトリッピーだよ。すべて何の説明もなく始まって、コスチュームもハンドメイド、奇妙な生き物がいっぱい出てくる。「ネバーエンディング・ストーリー」とか典型的。チープなファンタジー系映画がとても良い感じ。


― もし幾何学模様のディスコグラフィーが映画のサウンドトラックになるとしたら、どんな映画が一番ハマると思いますか?

T: セルゲイ・パラジャーノフの作品のうちのどれか。彼は1960年代~1970年代に映画制作をしてた人なんだけど、コスチュームが美しくて、カザフスタンやロシアの人々をベースにしたストーリーなんだ。設定がとても綺麗な森林エリアになってて、儀式的なタイプのものがたくさん登場するんだ。


― 今度また飽きてしまったら、セルゲイ・パラジャーノフの作品に幾何学模様の音楽を重ねて録音し直さないといけませんね。それでは、幾何学模様のヴォーカルについて聞かせて下さい。何語で歌っているのですか?

G: えーと、あれは日本語じゃないんだ。僕らはサウンドを歌ってるだけ。

T: そうだね。曲にあまり多くの意味を持たせたくないっていうのはあるよね。

G: 聴き手次第だよね。曲に意味がある時もあるけど、自分が歌ってる時に何が起こってるかによる。


― 曲の意味が変わると?

G: そういうこと。ライブによって、レコードによって、演奏する時、僕の頭の中には違うヴィジュアルが浮かんでる。


― 「House in The Tall Grass」は過去のリリース作品に較べて穏やかな印象があります。

T: そんな感じのサウンドにしたかったんだ。前回のレコード「Forest of Lost Children」は明る目だったから、今回はリスナーがまるで遠くから聴いてるみたいな感じの音楽にしたかった。僕らには、雪の中にある人里離れた一軒家のイメージがあった。で、その家をいろんな角度から見てる。リスナーと音楽の間には雪があって、その雪がサウンドをすべて吸収してしまうんだ。





― 理想的には、オーディエンスにどんな風に感じ、考えてほしいですか?

T: ただ良い時間を過ごしてほしい。僕らが演奏してる時に眠ってしまったって構わない。


― 何か特別な夢が見られそうですね。

T: そうだね。眠ってしまうか、ただ何か想像してもらう。僕らが誰かをインスパイアして何かをクリエイトしてもらえたとすれば、本当に嬉しいよね。たまに写真とか絵を送ってもらうんだけど、それって本当に嬉しいことなんだ。フィードバックをもらったり返したりするのは好きだよ。エネルギーの交換になるからね。


― 最近見た夢で覚えているものは何?

G: ちょうどバンドのシタール担当(訳者注:Gの実弟)がちょっと前に見た夢のことを話してくれたんだけど、自転車に乗ってたら、突然自転車が空に舞い上がっていったんだって。

T: 「E.T.」みたいだ。

G: そうそう。で、月に向かっていって、だんだん月に接近していって、月に着いたらそれがタマゴの黄身だって分かって・・・そこで目が覚めたんだって。


― 面白い。では最後に、あなた方はどの位の頻度で髪を切りますか?

T: 年に1回。僕の髪の毛ってとってもブ厚くて、夏マジで暑いから、空気を入れるためにほんの少しだけ切らなきゃならないんだ。でも冬はスカーフみたいになるしとても暖かいよ。僕らはそうやってサバイバルしてるんだ。