ファンとしては近い将来、Kevin ColeのホストでTramhausがKEXPでプレイする姿を見てみたい。同郷のIguana Death Cult(イグアナ・デス・カルト)先輩が昨年USツアーに絡めてKEXPライブに出演済みだから、きっとTramhausも!…と思いたいが、実はイグアナ先輩はアメリカのレーベル所属なのである。
「Song of the Day」に選ばれた際の地元ロッテルダムのメディア記事によると、Kevin Coleはライブ会場が混雑し過ぎていてTramhausのステージを見逃していたが、その後サウナでMichaと遭遇。最初Michaは彼と気付かず話していたとのこと(Lukas談)。なお、Kevin ColeはTramhausがノミネートされた2024年MME(Music Moves Europe)アワードの審査員としても名を連ねていた。
が、本人のInstagramに上がった抱っこ紐着用のカルロスを見て「なんも言えねぇ~!」となったのもまだ記憶に新しい。結局、女児誕生は2023年2月14日で、日本ツアー初日の大阪公演(2月17日)直前だった。1才になるまで顔出しNGだった女児も、最近ではパパとお揃いのジャージ(今はトラックスーツと呼ぶらしい)姿で2ショットを披露してくれたりとカルロスもすっかり父親の顔である。フランス人パートナー・Joséphine de la Baume(ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム)が「Glad I could clone you(あなたをクローンできて良かった)」と投稿していたのが面白かった。
ちなみに女優、モデル、ミュージシャンの肩書を持つジョセフィーヌとカルロスを結びつけたのはやはり音楽だったようである。当時(2020年)パリに住んでいたカルロスが、ジョセフィーヌが弟と組んでいるバンドFilm Noir(フィルム・ノアール)のライブを観に行って意気投合、カルロスの選曲でLee Hazlewood(リー・ヘイズルウッド)の「For A Day Like Today」のカバーをレコーディングしたという。なお、カルロスのパートナー(10才位年上らしい)については、Childhood(チャイルドフッド)のBen Romans-Hopcraft(ベン・ロマンス・ホップクラフト)とのつながりに始まり、婚姻歴や家柄に至るまでいろいろ興味深い情報がWeb上に上がっているが、ここでは省略しておく。
Tramhaus(トラムハウス)を初めて観たのは2023年11月14日、下北沢Basement Barのジャパン・ツアー最終日だった。当時、日本で無名だったTramhausがSNSの口コミで徐々に盛り上がりを見せ、ほぼフルハウスで最終日を迎えられたのは、まさにDIY精神の体現であり、近い将来あの場にいたことを誇れる"I was there"案件となったのはまず間違いがない。
あの段階で奇跡の初来日が実現したのには、いくつかのマジックの連鎖があった。TramhausがMusic Moves Europe Awards 2024のオランダ代表になるほど自国で勢いがあること(他国代表を見ても、いわゆる"ポストパンク"で選ばれたのがレア)、2023年11月9日東京開催のライブ・ショーケースイベント(一般社団法人Independent Music Coalition JapanとDutch Music Exportが共同主催)に招聘されたこと(ドラムのJimが流暢な日本語を話せるのが理由の一つにあるはず)、来日の交通費をオランダ大使館が負担してくれるというチャンスを生かし、バンド側が原宿のBig Love Recordsに連絡を取り日本ツアーをしたい旨伝えたこと、そして何よりも、金銭的リスクを厭わずライブ公演主催の決断をしたSchool in London代表・村田タケル氏の心意気である。
自分は来日PRインタビューの翻訳ボランティアをやらせて頂いたおかげで、やたらTramhausに詳しくなってしまった。今秋待望のデビューアルバム"The First Exit"をリリースする彼らは、日本やアメリカに降り立つタイミングでアルバムからの曲を初披露しているようだが、前述の来日時にプレイしてくれたのが"Beech"と"Once Again"だった(SXSWでは"Ffleur Hari"を演奏)。「あれ?ちょっとスロー?」が第一印象だったが、その時は歌詞の内容までは分からなかった。
2024年4月23日、デビューアルバムからようやく"Beech"の配信がスタートしたタイミングでいくつかのインタビュー記事が公開された。サウンド面についての言及は今のところあまり見かけないが、彼らはいわゆる”ポストパンク・バンド”と呼ばれることに違和感を覚え始めているように感じるし、新型コロナウイルスのロックダウン中に暇を持て余したロッテルダムのシーンの実力者達が「Viagra Boys的なバンドをやろうぜ!」と集まった初期衝動から徐々に変化を遂げ、デビューアルバムにして早くも最初の脱皮(The First Exit)を図ろうとしている…ということのようにも映る。
"Beech"は、今秋発売のTramhaus待望のデビューアルバム"The First Exit"から試聴可能な最初の曲である。もう1年も前に完成済みのアルバムだ。本作では"Beech"と同じようなテーマがほぼ全曲で取り上げられており、社会批判的な曲がきっかけでファンになった人には少々受け入れ難いかもしれない。が、Jansen自身も、このように私的な楽曲を世に送り出すことにさほど興奮を覚えていない。「自分のことを書いたとてもパーソナルな曲。だからこの曲について意見があるとしたら、皆んなどんな風に思うんだろう? ちょっと興味あるよね。自分もロッテルダムのことを歌うよりエキサイティングじゃないって感じるかもしれないし、結局皆んな何か思うところがあったりするんだろうな」
"The First Exit"は9月20日リリース予定。その後、Tramhausはバンド史上最大の欧州ツアーに出発、Paradiso(*アムステルダムにある教会を改装したヴェニュー)のメインホール(*キャパ1,500人)で10月2日にライブを行う。またBest Kept Secret(*オランダの音楽フェス)にも出演予定(6月8日)。
「世界ツアーをやるにはアルバム1枚作る必要があるって分かったんです」Katsuradaは笑いながら2枚目のアルバム<Forest of Lost Children>を制作した経緯について説明した。「急いでたのは僕らの方だったんです」(※別インタビューによると、オースティンサイケフェスへの出演(2014年5月)が決まったので急いでセカンドアルバムを制作したとのこと)
2枚目のフルアルバムは、制作に要した超特急のスピードにもかかわらず、彼らの持つコンセプチュアルな衝動と世界中から受けた多種多様な影響が見てとれる作品となっている。「ある部族が住んでる架空の島からの音楽…的なのを作りたかったんです。"Street of Calcutta” とか、いろんなサウンドをミックスしました」とKatsuradaは語る。曲の多くはデビュー当時に書かれたものだったが <Forest of Lost Children> で見事に融合し、そのハイライトとなったのは変幻自在のサイケデリックロック ”Smoke and Mirrors” であった。
あるレーベルがバンドのバックアップに興味を示したため意気込んで本作を送ってみたところ、「レーベル全員が『ダメだ、気に入らない』って言ってきて、結局契約できなかった!」とKatsuradaが語る。それでも世界への野望を叶えるべく、幾何学模様はニューヨークの小規模レーベル<Beyond Beyond Is Beyond Records>を見つけ、この作品をリリースした。このこともあり、バンドの夢の舞台のひとつである2014年のオースティンサイケフェスへの出演をはじめ、アメリカでのライブの数々が実現した。本国日本では未だニッチな存在であったにもかかわらず、幾何学模様は瞑想的で幻覚をもたらす音楽でその名を轟かせ始めていた。
House In The Tall Grass
どのような注目を幾何学模様が集め続けていようと、彼らのレーベルに関する欲求不満がそれに影を落としていた。「3枚目のアルバムでレコードレーベルと契約するのを僕らは心待ちにしてたんです。なのに誰も興味を持ってくれなかった」Katsuradaは後に<House in the Tall Grass>となるアルバムについてそう語った。「皆んな『It's not my cup of tea(好みじゃない)』って言うんです。Facebookのメッセンジャーで何度見たことか。『好みじゃない、好みじゃない…』」
<House in the Tall Grass>は二人にとって重要な作品となった。仕事を終えてスタジオに向かい、2,3時間かけて制作し、帰りの電車でラフミックスを聴く。そんなアルバムの制作過程をKurosawaは誰よりもよく覚えているという。
「その時点でやっと、前よりずっと多くの海外ツアーができるようになっていました。その頃ですね。バンドを皆んなにとって経済的に安定したものにして、他のレーベルに頼らなくてもやっていけると悟ったのは。<House in the Tall Grass>は、すべてDIYでやるって決めたときのアルバムなんです」そう語るKatsuradaは本作のレコーディングで自分のソングライティングのスキルが上がったと感じたという。
キミ:バンドにとって海外ツアーの実現はずっと大きな夢だったし、中でも日本は最重要視してた。「Closer Than Most」っていう曲に「Tokyo in the fall(秋には東京で)」っていう歌詞があるんだけど、自分が未来を予言していたのかは分からない!メンバー全員、東京に行って東京を体験できるってことにとても興奮してる。
キミ:あの時のツアーは長丁場だったから、ちょっと小さめな街(※熊谷)にいた時の話なんだけど、メッシュのボディースーツを着てたんですよ。ちょっと裸に見えるんだけど、裸じゃないみたいな(※下の写真参照)。で、出番の前にチームの人に「I'm not naked(私は裸ではない)」って日本語でどういうのか訊いたんです。そしたら教えてくれて…何だっけ…「ワタシハハダカデハナイ」。で、ステージに上がってそれを言ってみたら(笑)観客の皆んなが…(笑)一瞬意味分かんない…みたいになって(笑)、自分はまた「ワタシハハダカデハナイ~!」って叫んだんです。そしたら皆んなが「イェ~~!!!」みたいになって。…まさかそんなこと言うとは思わなかった!みたいなことを日本語で言うだけで日本の人を笑わせられるってことよね。皆んな「やられた!」みたいになっちゃてたし。努力を重ねてそこの文化とかいろいろ楽しんじゃえば一瞬で壁はなくせるし…、まぁ前回のツアーはそんな風に進んでいったってわけ。
実はこのバンド、日本では全く無名だった2018年に初来日を敢行。日本独自のEPのリリースまで果たしている。そんな掟破りなプロモーションを展開しているのが彼らの日本でのレーベルB.I.J. Records。「Big In Japan」を意味すると思われるが、「No Risk. No Future. 」を謳い、高校生がお小遣いで来れるライブを目指してチケットの価格設定もお安め(今回のスターベンダーズの場合、洋楽なのに前売4,800円、早割パス4,000円!)。何だか応援したくなるイノベーティブなレーベルなのである。
というわけで、スターベンダーズがSNSで「読んでね」とリンクしていたロサンゼルスのメディアWEHO TIMES(West Hollywood Times)が行ったインタビュー記事を翻訳してみた。2022年11月6日にLAで行われたライブのPR目的のインタビューではあるが、メンバーの幼少期の話、家族構成等、興味深い内容なので是非読んでほしい。そして何よりもライブに足を運んでほしい(今ならまだ小さい箱で見れる!)。なお、元記事の写真のチョイスがあんまりだったので、イケてる写真に勝手に差し替えたことも一応付け加えておく。
ロサンゼルスの非営利団体<Children of The Night>のために開かれた素晴らしいチャリティーライブイベントに出たことはもっと多くの人に知られるべきだね。キミがスターベンダーズを巻き込んだんだよね。<Children of The Night>はここアメリカで1万人の子供と若者を人身売買、ポルノ、売春からレスキューしてきた。そう、まさにここアメリカ合衆国で!
またデ・ワイルドには、名高いロックフォトグラファーでありビデオディレクターでもあるAutumn de Wilde(オータム・デ・ワイルド)とベテランドラマーAaron Sperske(アーロン・スパースク:Beachwood Sparks(ビーチウッド・スパークス)、Father John Misty(ファーザー・ジョーン・ミスティ)、Ariel Pink(アリエル・ピンク)、Pernice Brothers(パーニス・ブラザーズ)等で活躍)の娘として、普通でない環境で育った為、周囲に馴染めないという悩みもあった。「ウチにはいつも色んなバンドメンバーが泊まりにきたり、訪ねてきたりしていて、自分はそういう環境で育ちました。それが普通だと思ってたんです」。アロウは肩をすくめた。10才位になるまで両親のロックンロールなライフスタイルが普通ではないことに気付かなかったという。自分の家より標準的で保守的な友人宅のディナーに招かれた時のエピソードを話してくれた。