7 June 2017

LA発4ピースバンド・Froth(フロス)|Jeremy Katz(ジェレミー・キャッツ)インタビュー

日本では知る人ぞ知る4人組バンド、ロサンゼルスを拠点とする「Froth(フロス)」。サーフロック、ガレージ、サイケデリック、シューゲイザー等、そのサウンドの多様性ゆえカテゴライズするのはなかなか難しいのであるが、何と言っても一部の音楽ファンの間に彼らの名を知らしめたのは、当時イブ・サンローランのクリエィティブ・ディレクターだったHedi Slimane(エディ・スリマン)による「General Education」の2014年秋冬コレクションへの起用である。


 Froth(フロス)のメンバー
右からJeremy Katz(b)、Joo-Joo Ashworth(g&vo)、Cameron Allen(dr)、Nick Ventura(g)。


アルバム3作目「Outside (Briefly)」にしてWichita Recordings(ウィチタ・レコーディングス)と契約したFroth。同じくWichita Recordingsから21年振りにスタジオアルバムをリリース予定であるUKの大御所バンドRIDE(ライド)の2017年7月北米ツアーのサポートアクトに大抜擢され、本人達も「This is "Like a day dream for us"」とツイートしてしまう夢の事態に!


2017年RIDE北米ツアーをサポートするFroth


というわけでSkiddle.comによる腹が出過ぎなベーシスト・Jeremy Katz(ジェレミー・キャッツ)のインタビュー(2017年3月)の和訳を掲載。日本におけるFrothの知名度向上を狙おうという目論見である。ほとんど楽器を演奏したこともなく、20分も無音でスピンするレコードをふざけて制作していた冗談半分の"架空の"バンドFrothは、いかにして成長していったのか?


【元ネタ英語記事】  Froth interview: From a joke to a successful touring band.(2017年3月29日)

以下、当サイトによる和訳

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バンド名の由来は?

Jeremy Katz(ベース)(以下略):ホントに冗談でしかなかったんだ。僕らはサーフィンをしながら大人になったんだけど「Frothing」ってオーストラリアでよく使われるサーフィン用語なんだ。

(訳者注:「とても興奮している」の意。しかしながら、バンド初期2013年にヴォーカルのJoo-Jooが明かしたところによると、「Froth」にはよりセクシャルな意味がある模様。詳しくはこの記事の中盤参照。)

今年(2017年)はいろいろありますよね。まずは最近アルバムをリリースされました。アルバムへの反響には満足されていますか?

反響はとてもいいみたいだよ。いまのところUKやヨーロッパの方が反響がいいように感じる。まぁ僕らにとってはいつものことなんだけど。

新アルバム「Outside (Briefly)」の中で一番気に入ってる曲は何ですか?


アルバム3作目「Outside (Briefly)


僕個人としては「Petals」って曲が好きかな。アルバムの中のお気に入りなんだ。2曲目の「Shut The Windows」も好きだな。うん、でもアルバム全体についてとても満足してる。

ツアースケジュールを見せて頂いたんですが、本当にノンストップですよね。睡眠不足で死なないようにどうやってこのスケジュールをサバイバルするのですか?

そうなんだけど、分かんないや!アルバムが出て、9月半ばまでは基本的にツアーなんだ。ちょうど昨夜1ヶ月のツアーから戻ったばかりでめちゃくちゃ疲れてるよ。今は2週間の休暇中なんだけど、その後また2ヶ月ツアーに行くんだ。

バンド初期の頃の話についてですが、バンドの中には最初、楽器の演奏の仕方をほとんど知らなかったメンバーもいるって話を読んだのですが、今のFrothの牽引力を考えるととても感慨深いものがあります。あまり経験のなかったメンバーがどうしてこんなに早く自信をつけることが出来たのでしょう?

バンドを始めた頃、僕とJoo-Joo(ヴォーカル&ギター)はバンドで演奏したことなんてなかったんだ。Joo-Jooはほんの数ヶ月ギターを弾いてただけでかろうじて歌えるって感じだった。僕なんてバンドに入る前は楽器の演奏さえしたことがなかった。

最初は面白がってジャムりまくってるだけだった。それからドラマーのCameronが加入したんだけど、Cameronはとても巧いドラマーだったから、僕らにしてみればCameronの加入のおかげで簡単にバンドが巧くなったよね。大体Cameronはバンドをまとめる接着剤みたいな存在だった。Cameronとプレイするようになってから、僕らは上達し始めたんだ。頼りになるヤツで全部をうまくまとめてくれるんだから。

ちょっとした遊びや冗談で始まったバンドということですが、今現在のスケールにまで到達するって思ってらっしゃいましたか?

全然!もちろん思ってなかった!

数年前、イブ・サンローランがファッションショーでFrothの1曲を取り上げて、モデルとしてメンバー2人を起用したことがありました。あれはどういった経緯で?

イブ・サンローラン2014年秋冬のショーでランウェイを歩いたJoo-Joo


Hedi Slimane(イブ・サンローランのデザイナー(訳者注:2016年退任)がずっとカリフォルニアにいて、Burger Records(訳者注:Frothの所属レーベルのひとつ)関連のありとあらゆるライブに顔を出してたんだ。一度僕らがライブをした時、Hedi Slimaneが写真を撮りに来ててFrothの1曲を気に入ってくれた。それでファッションショー用に15分ヴァージョンを作って欲しいって頼まれたんだ。

あの時のメンバー全員にとって、人生で一番クールな出来事だったよ。


旧メンバー・Jeff Fribourg(右端:オムニコード&アルバムアートワーク担当)がいた頃



その時点で「成功した」と思いましたか?

世界の反対側までタダで行けるのは素晴らしかったよね。当時ツアーさえしたことなかったんだから。動揺しまくってパリまでひとっ跳びって感じだったな。

成功っていう風には思わなかったけど、多分「あぁ、これってマジなんだ」みたいに思ってた頃かな。

では将来的にFrothにはどのくらいビッグになってほしいですか?

出来るだけ多くの人に僕らの音楽が届いて欲しいって思うだけだよ!名声を手に入れるのも素晴らしいことだけどね。名声について時々考えてるのも事実だけど、僕にとってはクールなアルバムを作ることの方が重要だね。いつだって最終的なゴールはそこにある。

バンドが形になっていく上でロサンゼルスという街からはどのような影響がありましたか?

Frothを始めた頃、ロサンゼルスには揺るぎない音楽シーンがあった。その音楽シーン全体がエコパーク辺りで開花したって感じだった。本当にたくさんのバンドがひしめいてた。友達は皆んなバンドやってたし。ロリポップレコード(訳者注:Jeremy Katz本人も参加しているレーベル)もあったね。皆んなライブに出て一緒にブラブラしてた。だからFrothが形になっていく上で影響しているのは間違いないよ。僕らの周りで起こってたことを見れば明らかだよね。

ロサンゼルス以外だと、アメリカのどこで演奏するのが一番楽しいですか?

メンバー全員にとって西海岸のツアーは楽しいよね。休暇みたいだからってだけなんだけど、景色もとても綺麗だし。やることもたくさんあるよね。運転する距離もそんなに遠くないし、観客はいつだって素晴らしいよ。僕らはテキサスでプレイするのも大好きだなんだ。何でだか分からないけど、テキサスだとライブがうまくいく。

僕はフロリダ出身だからいつもツアーはマイアミで終わるんだ。ツアーでフロリダまで行くバンドは多くないけどね。ツアーでは大体アメリカのはずれまで行くよ。アメリカ中部は全体的にちょっとクソだけどね!

今年はSXSWでもプレイされましたよね。実際、英国ではSXSWに関する情報がたくさん飛び交っています。有名な音楽ジャーナリストがSXSWをレポートしようと集まってくる傾向にあります。SXSWは報道されるほど素晴らしいものなのでしょうか?


【SXSW 2017】 Froth Live in Las Vegas (March 10, 2017) (Full Set) 


個人的にはキライだけどね!死ぬほど知り合いに会えるしいろんな人を見れるから、あそこに2日いると、いつだって結局は楽しめるんだけど、個人的な意見を言わせてもらえば僕らみたいなバンドにとっては全く時間とカネの無駄だよね。

英国とかヨーロッパからライブを観に来る人にとっては楽しいんだと思う。だってバンドをたくさん観たいわけだから。だけど狂ってるよね。カネはかかるしかったるいし、馬鹿げてるよ!初めて行った時は最近行った3回よりは楽しめたけどね。

SXSWの出演者として名前があった海外の複数のアーティストが国籍のせいで今年、入国を拒否されました。トランプ大統領のせいで海外からの優秀なアーティストがツアーのためアメリカにやって来るのを抑えられる状況は続くと思いますか?

そうならないといいけどね。だけどヤツに何が出来るかなんて誰にも分からないよ。だから多分トランプ以外の皆んなが嫌がることをすべてやってみるつもりなんだろうね。

では大西洋を越えてパフォーマンスのために英国まで行くわけですが、楽しみにしていらっしゃることは何ですか?

僕らは全員いつも英国に行くのを楽しんでるよ。特に僕はずっと行きたかったグラスゴーに初めて行けるからワクワクしてるんだ。マンチェスターにも行ったことないけど行くよ。あとブリストルも。イングランドの新しい街がたくさん。いつだってライブするのにお気に入りの街だから、僕らはとってもワクワクしてるんだ。

英国でのライブについてファンが期待出来ることは何でしょうか?

レコードよりちょっとだけ早めの曲を聴けるって思ってくれていいよ。図らずも僕らがいつもやっちゃうことだけどね。次回のツアーではヴィジュアル的な何かも取り入れてエネルギをー高めにキープしてみるつもり。英国の皆んなはライブに来て自分自身で体感してみるべきだよ!


最新作「Outside (Briefly)」より1曲目「Contact」